あなたは英語で戦えますか: 国際英語とは自分英語である

著者 :
  • 冨山房インターナショナル (2011年9月22日発売)
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如何に英語が重要であるか、とか、グローバル化社会の中でどうたらこうたらとか言う人は、なぜか英語で自分の考えを発信をしていない。英語の著作もないし、英語で書かれたブログやユーチューブ動画もない。あっても、発音の仕方や、簡単な会話や意見を言ったものだけ。ただ、英語が重要だ!と声高に叫ぶことに徹している。

日本で、英語で食っている人は沢山いる。
2.300万人はいるだろう。

①英語の先生(中高、大学非常勤、教授)
②受験英語の塾、予備校講師
③TOEIC英語・英会話の講師
④日本語で書かれた英語学習自己啓発本の著者
⑤日本人の英語コンプレックスを利用したユーチューバー

日本人が英語を学ぶ理由は、
彼らを食わすためである。
もちろん彼らは、英語の重要性を叫ぶが、
英語で発信することはしない。発信すると、自分の下手くそな英語力がバレてしまうからだ。それなのに、英語を教えているから不思議だ。

もし、本当に日本人に英語が必要なら、
書店に英語が並んでいるはずだし、
図書館にも洋書が沢山ある。

近くの地区最大の図書館、蔵書数60万冊で外国語・洋書は300冊、0.05%。99.95%は日本語である、これは1000人いたら、「本当に外国語を必要としている人は5人ぐらい」だと言っている。

そういう状況なのに、今では小学生から英語を勉強させられている。本当に可哀想だと思う。大学受験に必要とされているからだろうが、小中高で読む、話す、聞く英語の量は、ペーパーバック一冊にも遥かに満たない。それなのに、やれ試験対策や受験対策で、つまらない勉強をさせられる。

大学生になったら、これまたつまらないTOEICを勉強するように、「何となくなっている」ので、いつまでも、英語は本当に出来るようにならない。また日本には、英語を勉強しなくちゃいけないと思っている人が山のようにいる。英語で食っている人達は、あの手この手で、この英語コンプレックスを持っている人達に働きかける。

働きかける人達も、元は英語コンプレックス者であった。コンプレックス者が、コンプレックス者を巻き込むことをハラスメントを生む。そこには搾取の構造が存在する。

著者の鈴木孝夫氏は、この著書で、
如何に日本の英語教育がデタラメかを指摘している。そして自身が生み出した概念を提唱している。確かに氏が言うように、ある一定の人しか、外国語は、そもそも必要としていない。鈴木孝夫氏のユーモアは一級である。どんなに発音がうまくて欧米人のように話せても、ユーモアと内容がないとダメだろう。

外国語を長年やってきたからわかるが、
外国語は、サッカーに似ている。
まず、練習しなきゃうまくならない。
そして、ある程度、練習して、それから上手くなるには、才能が必要になる。

ただ語学はサッカーと違い、知識が非常に重要になるので、語彙が沢山あった方がいい。つまらない、知らない、わからない、できないという経験を何千回も繰り返す。必然的に膨大な時間がかかる。数千時間は余裕で使う。ただ、それ以上に抽象的な物事を理解する能力も必要になるので、これは努力しても、どうにもならない。

サッカーと同じで、自身が「楽しく感じる基準」を作れば、どんなに下手くそでも、やるだけで、面白い。ボールを蹴っていれば、それだけで嬉しくなる感じだ。
こういう状態が外国語にできれば、もう言うことはない。私は外国語は、下手くそだが、英語や中国語を読むのも、聞くのも大好きなので、続けている。書評もたまに、それらの外国語で書く。外国でも言葉で困ったのは、大学院に通っている時で、それは、クソ難しい論文を読まなきゃいけないからで、それは仕方ない。

外国語が習慣として当たり前のように生活の一部となるのは、実感から、学習を始めて10年後ぐらいだと思う。毎日、数時間を練習しての結果だから最低3000時間は使う。この時間は、あくまで集中してトレーニングした結果の時間のことである。その意味で外国語学習は、筋トレにも似ている。

残念なことは、今の日本の英語教育は、
これと真逆なことを行っている。
リーダーでクソつまらない文章を読まされ、全く話す機会が日常にないのに、
会話やリスニングをやらされる。
全ては、英語教師や、受験業界、
TOEIC業界の人達を食わすためである。

週に10時間カリキュラムがあったとして、
年に500時間。予習復習を考慮して1000時間使い、それを6年間続けて6000時間。
かなりの学習時間だ。それなにペーパーバックでさえも読めない人が学習者のほとんどだろうから、根本的日本の英語教育は間違っていると言わざるを得ない。

外国語学習は、確かに楽しくなるまでに、
時間と金がかかる。わからないことばかりだし、書籍も高い。ただ、外国語を読む、聴く、書く、話す習慣が当たり前のように日常化すれば、日本が今絶望的に酷い状況でも、楽しく毎日を過ごせる。なぜか、それは外国語の習得を通じて、学習の本質がわかるからだと思う。つまり、自分を知るための手段として学習というものが存在し、そういう見方があるのなら、どのような環境も、優れた学習の機会になるという理屈だ。

コスパ的には外国語学習は、一番悪いと思う。数千から何万時間投資して経済的恩恵はあまりない。これに投資するなら、会計士の資格でも取得した方が遥かにいい。ただ、外国語の学習は、自分を豊かにしてくれるので、コスパとかどうでもいい。

日本のテレビやニュースを見る必要もないし、ユーチューブも日本人がやっている程度の低いものを見る必要がなくなる。情報に関しては、30倍ぐらい英語や中国語の方が日本語より発信されている(インターネット使用言語から)。玉石混交だが、玉を探した時の喜びは、たまらない。外国語の学習は、数少ないより良く生きるための手段だ。テストとか受験とか、キャリアのためではなく、自分がより良く生きるためである。
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年1月12日
読了日 : 2021年1月12日
本棚登録日 : 2020年11月23日

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