「夜の写本師」「魔道師の月」「太陽の石」と続いたオーリエラントシリーズの4作目。今作は短編集です。
連作短編集として糸が紡がれるように最後には大きな一本に繋がるのかな、と思いきや、
巻末の年表によって、いずれの話もはるかな年月の隔たりがあり交錯する可能性がないことを教えられました。
この短編集に出てくる主人公たちは皆、市井のひとびと。
千年を超えるときの流れの中で、どの時代のひとたちもカラン麦のパンを食べ、葡萄酒や麦酒を飲み、セオル(外套)を巻きつけて暮らしている。
多くは名もなきその他大勢で、歴史に名を残すことはない。そんな人々にスポットライトを当てた今回の短編集。慎ましやかに暮らしているその細部を鮮やかに描き出す筆致が、オーリエラント本編の物語の深みを与えていることは想像に容易い。
いったい、乾石さんの頭のなかにはどんな世界が拡がっているんだろう。
この中では「魔道写本師」の話が一番好き。
イスルイールさんの堂々とした立ち居振る舞いがいいな。
はやくシリーズ続刊の「沈黙の書」を読みたいと思わせる半面、またシリーズを最初から読みたくさせる短編集でもありました。
いつかハードカバーで本棚に並べたいな。
なんといってもこの本は、装丁にまでも、物語の世界は広がっているから。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年12月8日
- 読了日 : 2014年12月7日
- 本棚登録日 : 2014年10月1日
みんなの感想をみる