「小説新潮」に掲載されたものの単行本化。
夫に死なれた沙穂は子供を連れて、夫の職場であり、
年の近い叔母千種の嫁ぎ先でもある、蘭方医玄齋の
診療所に寄寓して手伝いをしていたが、千草公認で
密かに思いを寄せていた玄齋に抱かれ、妻妾同居し
て玄齋の子を産む。
玄齋は種痘を広めることに熱心で、幕府から頼まれ、
蝦夷地を一周してアイヌに種痘を施したが、その途
中で種痘の畑(保菌者)として連れて行った二人の
息子を亡くす。
誠意を尽くしてアイヌのエカシの信頼を得、事業を
軌道に乗せる様は圧巻。
小樽在住の作者ならではと思わせる。
玄齋の留守中、千種と沙穂の妬み合いから、妊娠し
た沙穂に対抗するため、残った弟子を使って千種も
妊娠し、出産するが、これが元で玄齋は誤って殺され、
弟子も家族もみんなばらばらになっていくなかで、沙
穂は玄齋の跡を継ぐ決心をする。
なんともすさまじい人間関係。
千種が「人は誰も自分一人の舟に乗っている」と語り、
沙穂が水たまりに浮かぶ葉の上に乗る蟻に自分も
々だと思う場面があるが、表題はそれを受けている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代小説
- 感想投稿日 : 2012年11月29日
- 読了日 : 2012年11月29日
- 本棚登録日 : 2012年11月29日
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