このミス海外編2010年版2位。この年大評判となった3部作の第1作目。
出版会社を経営する主人公がある実業家の不正を暴く記事を出版したが名誉棄損で訴えられ実刑を受けるところから話が始まる。会社が窮地に陥ったところで、会社の援助と交換条件で約40年前失踪事件の再調査を依頼される。事件発生後に警察を中心に丹念に捜査されたが未解決で40年経過しており関係者を含め絶対無理という雰囲気で調査が進められる。案の定、上巻は全く捜査が進展せず膨大な数の登場人物の紹介にさかれていく。読者も無力感に引き込まれ、非常に退屈で読み進めるのがかなりしんどい。その中で、唯一、もう一人の主人公である「ドラゴン・タトゥーの女」は個性が輝いており、この人が登場してくる箇所は突然物語が活性化し目が覚める。
下巻に入ると調査が進み始める。徐々に調査の進行が加速していき、事実が判明していくにつれて物語の展開の速度が速くダイナミックとなって行き、性犯罪、連続殺人、経済犯罪、サイバー犯罪、サスペンス、アクション、恋愛と様々な話題が目まぐるしく展開していく。そういった展開やミステリーとしての完成度が本書の魅力の大きな部分を占めるが、その中でも、登場人物の造形の素晴らしさが他に類をみない。特に主人公女性の設定が素晴らしい。唯一無二の個性を持っているが、きちんとDNAから設計したように、いろいろな突飛な反応や心の動きがリアリにシミュレーションしたように深みを持ち納得感がある。
前半我慢を強いられる小説はあんまりお勧めはしないのですが、この本はそれを補ってあまりあるぐらい良くできた本で傑作です。
- 感想投稿日 : 2021年1月31日
- 読了日 : 2021年1月31日
- 本棚登録日 : 2021年1月26日
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