日本人の心理 (岩波新書 青版 149)

著者 :
  • 岩波書店 (1953年11月1日発売)
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本棚登録 : 62
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戦後間もない時期1953年の日本人論。書中で引用されている論者たちが古く旧仮名遣いが多いが、今も昔も同じ、今読んでもなるほどと思う。長いものに巻かれろ意識と滅私奉公(忍従)、日本人の不幸感(幸福感よりも)、非合理主義と合理主義、精神主義と肉体主義についての論述は70年を経ても変わっていないのだ!日本人が幸福な状態についての生活感情が薄い!とは絶妙だ。一方で、「楽」とは心配がないこと、消極的な「安楽」の意味とのこと。その中での「あきらめは絶望・失望ではなく、いつも【最悪】を予想している態度」「断念ではなく、普段から覚悟を決めている」のは思い当たるところが多い。「日本人は人間社会の不幸を自然の中に慰めを求めることから自然を愛する」との主張もなるほど!やくざの世界の非人間的な世界を悲壮な運命とし、罪悪感を薄くしているとの指摘も苦笑い。精神と肉体では、軍の精神・肉体主義と恋愛(性愛)にまで共通した説明が実に面白い。あまり読んだことがない日本人論であり、古い書物ながら新鮮だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論
感想投稿日 : 2016年6月16日
読了日 : 2016年6月16日
本棚登録日 : 2016年6月13日

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