ビリー・ミリガンと23の棺 上 (ダニエル・キイス文庫 6)

  • 早川書房 (1999年10月1日発売)
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裁判の後、マスコミの扇動と政治的な利用のため、「地獄」と言われるライマ病院に送られた後のビリー・ミリガンの戦いの記録。

そこにいる精神病患者達のおとなしさとは対照的に、医師とスタッフの悪魔的な所業の数々に戦慄する。ビリーはダニエル・キイスに本を出版させる予定だったので、スタッフ達は犯罪行為が暴露されるのを恐れて、薬と電気ショックで口封じしようとする。

幼い頃の継父による虐待と同様、地獄を生き抜くために、再び「教師」は人格を分裂させ、各人の特技を使った連携で事態を乗り越えようとする。環境に対応するために、人間はここまで出来るのかと前作以上に驚愕させられた。

ビリーの場合、24人各人の能力は、統合された1人の能力を上回るということも興味深い。ライマの中で「教師」はあえて、反抗能力がなくなったと油断させるために「マーク」を使い、計画に「アーサー」、相手を操るのに「アレン」、危険な状況で「レイゲン」と、各専門家に委ねて、自分は意識の奥から見守ることにした。

最終的にビリーは社会への信頼を失って自殺を決意するところまで追い込まれるのだが、極限まで死に近づいた時、全ての人格が死を迎えて意図せずビリーを一人の人間に統合することになった。これがきっかけで、ビリーの反撃はまた始まり遂に自由を勝ち取るまでになる。映画のようなエピソードの数々に目を奪われるが、死が唯一の自由と確信するまでに至ったビリーの境遇にはやはり同情させられた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドラマ
感想投稿日 : 2013年7月24日
読了日 : 2013年7月24日
本棚登録日 : 2013年7月24日

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