これは、経済エンターテイメント小説とでもいうのだろうか。今をときめく著者による本書は、昭和の「高橋是清」と、現在・平成の架空の女性総理との会話のドラマなのだが、その内容は、マクロ経済をわかりやすく解説した内容でもあり、読んでも面白い。
「高橋是清」は、昭和20~30年代に活躍した政治家であるが、当時デフレを脱却するための政策を推進した著名な政治家である。
本書は、当時と現在の日本との共通点「バブル崩壊、デフレの深刻化、やってはいけないデフレ下の緊縮財政、大震災、東北の津波、政局の混乱、ほとんど1年ごとに変わる総理、アメリカのバブル崩壊、世界的な恐慌」を指摘し、それから脱却するためには、当時「高橋是清」が行った政策を現在も行うべきだと本書で主張しているのだが、それが「高橋是清」と若い女性総理とのドラマ仕立てで、教師と生徒との会話のように進行するところが、面白い。
マクロ経済を扱ったエンターテイメント小説というのは、あまりないとは思えるが、このような本が面白く感じられるところに現在という時代が見えると思えて興味深かった。
思うに、本書は世の中に「デフレを脱却するためには、財政政策と金融政策のパッケージが必要」という認識を一層広めて、反デフレ派・リフレ派の主張が力を増すことに影響を与えるのではないか。
本書は、マクロ経済と現在の政治経済や昭和20~30年代の歴史の勉強にもなる良書であるが、このように楽しみながら「反デフレ・反消費税増税」という政治的主張が浸透するような本が出てくることは、世の中が変わる先駆けではなのかとも思えた。本書は、面白くかつ興味深い書であると思う。
- 感想投稿日 : 2012年6月14日
- 読了日 : 2012年6月14日
- 本棚登録日 : 2012年6月14日
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