マニエリスムは、マンネリという有り難くない言葉として現在流通している。
ルネサンスの延長として生まれたマニエリスムは、巨人たちの時代=ルネサンスのマヌエラ(手法)の模倣に過ぎないとして、後代に当たる17世紀バロック時代に徹底的に否定された。
それが、マニエリスムをマンネリとして貶めることになる起源だ。
そのため、マニエリスムは20世紀に至るまで無視され続けることになってしまった。
マニエリスムが再評価されるようになったのは20世紀に入ってからだ。
本書で若き若桑みどりが目指すのは、20世紀に<再発見>されたマニエリスムの復権だ。
その語りは熱い。
ルネサンスの秩序が崩壊した「危機の時代の芸術」がマニエリスムだと著者は指摘する。
そして、16世紀は、時代そのものを表現する様式としてマニエリスムの時代だったと言う。
マニエリスムは、単なるルネサンスのマンネリではなかったのだ。
時代の要請した芸術だったのだ。
マニエリスムが時代の要請した時代精神であるならば、時代の総体がマニエリスムとして把握されなければならない。
そのためには、どうしても必要なことがある。
それがアレゴリーへの理解だ。
アレゴリーへの理解を欠いたマニエリスム解釈はあり得ないのだ。
16世紀というエポック=時代全体をマニエリスムの作品と見做し、そのアレゴリーを読み取ることで、豊饒なマニエリスムの復権が初めて可能となる。
時代をアレゴリーとして読み解くことで、マニエリスムの復権を高らかに宣言するのだ。
美術史家若桑みどりの作品はいくつか読んだが、彼女の最高傑作は美術に関するものではない。
意外なことに日本史に関するものだ。
それが、天正少年遣欧使節を丁寧に描いた「クアトロ•ラガッツイ」(四人の少年たち)だ。
- 感想投稿日 : 2023年8月8日
- 読了日 : 2017年12月20日
- 本棚登録日 : 2022年11月27日
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