うちの執事が言うことには (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2014年3月25日発売)
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名家である烏丸家の27代目当主になった花穎(かえい)。父の急な引退宣言で18歳にして家督を継ぐことになり、イギリスから帰国。彼を出迎えたのは、絶大な信頼を寄せる執事・鳳ではなく、衣更月という知らない青年だった!巻き込まれていく事件を息が合わないコンビが解き明かす上流階級ミステリ。連作短編集になっており、事件3話に加えて、衣更月と鳳のエピソードを描いた『仔犬のワルツ』も収録。

『はだかの王様と嘘吐き執事』
イギリスから帰国したばかりの新当主・花穎を出迎えたのは、見知らぬ執事・衣更月と食器盗難事件。銀食器とティーカップの一部が一晩で消失してしまった!泥棒の仕業だとしても、通報すれば烏丸家の名に関わる。花穎は独自に調査を開始するが──。

デコボココンビの初陣。ティーカップの謎はすぐわかったけど、銀食器はわからなかった。ライトな謎を提示しつつ、花穎と衣更月の間にある溝も明らかにしていくリズミカルな展開。名家の主人ということで、真実をつまびらかにすることに加えて、いかに粋に対応するかという部分も問われるのが面白い。

『白黒羊と七色の鬼』
社交界デビューにと、芽雛川家の次男・肇大が主催するパーティに出席した花穎。そこで巻き起こった傷害事件。悲鳴を聞きつけてトイレへと助けに入った花穎は、犯人の濡れ衣を着せられてしまう──。

資産家の子たちが集うパーティ。しかし、そこは一瞬も気が抜けない鬼ばかりの空間だった。事件自体はシンプルながら、上流階級の歪んだ絆が顔を見せる恐ろしさ。事件を解くだけでは不十分なのだ。不条理なしがらみの中でどう落としどころを作るのか。花穎は家を継いだ。何も知らない子羊ではもう居られない。

『ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家』
いきなり訪問してきた赤目。彼が付き添ってきた相手は車いすの少女・久丞壱葉だった。花穎は父・真一郎と壱葉の約束を守るため、二人で遊園地へ行くことになった。しかし、楽しむはずの遊園地で二人は誘拐されてしまい──。

「卵が先か、鶏が先か、だ。皆が自分を信じてくれる人だけ信じていたら、一生、誰も信じられない」
誘拐だからこそ、花穎と衣更月の主従関係が試される。相手が自分を信じてくれなくても、自分が相手を信じない理由にはならない。なんだかんだで花穎は真っ直ぐで頭も回るし、いい当主になりそうだなと感じられるエピソードに。それにしても、アフターケアが完璧すぎてそっちの方が怖い(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年4月15日
読了日 : 2022年4月15日
本棚登録日 : 2022年4月15日

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