invert 城塚翡翠倒叙集 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2023年11月15日発売)
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感想 : 83
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完璧な計画による殺人。鉄壁のアリバイ。事件は事故として、他殺は自殺として処理されるはずだった。そこに霊感によって視えないものを視る城塚翡翠が現れるまでは──。犯人視点のミステリ作品集。

第一作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読んでから、この第二作を手に取ることを強くお勧めします。あと、ぼくとしては前作までで読むのを止めておけばと後悔した作品だった。前作では怒涛の大逆転にただただ驚愕。死闘を繰り広げた犯人との関係性にも、単なる敵以上の感情めいたものを読み取り、余韻深かったところに魅力を感じていた。それが全部「反転」してしまう。結局は「人間の心を持たない変態殺人シスコン野郎」としか認知されていなかったんだなあ。この言葉で前作の哀愁感が吹き飛んでしまい、一気に色褪せてしまった。

城塚翡翠というキャラに仕組まれた「反転」はもう使えない。そこで倒叙ミステリとして犯人視点から翡翠を描くことで、読者がすでに知っている「反転」を再び活かすというアイデアは面白い。でもね、こんなキャラだった?!あざといをデカ盛りし過ぎていて胃もたれ。胃はムカムカ、心はイライラしながら読むことに。「納得さんです」「てへぺろこっつんこさんです」とか、コナンでも「あれれ~おかしいぞ~」ってなるだろ(笑)

倒叙は犯人の動機に同情の余地があると犯人サイドを応援しがちなのだが、ウザがらみしてくる翡翠がまったく面白くない。翡翠は論理をすぐ構築できるが、物証がなくて証明できない。そこで容疑者に近寄って、物証や失言を引き出すというのはわかる。その近づき方が男は色仕掛け、女は天然煽りというのが好きになれなかった。三話目も苦戦していると思いきや、いきなりイキってくるのが…。そして、翡翠の本心はどこにあるのかがつかめず、感情移入ができないのもしんどい。事件に横入りしてきて解明していくすっごくめんどくさい人(まあその通りなのかもしれないが)でしかなくて、どう読めばいいのかわからなかった。古畑パロディもメタ的なネタで醒めてしまう。このシリーズはお腹いっぱいさんかな…。不満点ばかりあげて申し訳ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2024年1月23日
読了日 : 2024年1月23日
本棚登録日 : 2024年1月23日

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