発売当初に購入して読んでいた作品を久し振りに読み直し。ぼくがライトノベルに興味を持つきっかけとなった小説。この作品の特徴は、学園に起こる事件を語り手や時系列を変えながら描き、読み進めていく内にその全貌が明らかになっていく手法。同じ場面でも立場が違えば、その意味合いは大きく異なってくる。普通に見える行動の裏側で、実は思いもよらないことが進んでいたり、その反対もあったり、視点が変わる面白さを堪能できる。まさにゲーム小説大賞にふさわしいと感じた。
事件自体はとてもシンプル。学園に棲む“人を喰うもの”を巡る戦い。中盤から少しずつ盛り上がってきて、伏線が回収されて決着する部分はもちろん面白い。ただ、それ以上にそれぞれの登場人物の心理描写が見どころになっている。普通の学生だけど皆何かしら歪なものを抱えていて、それについて悩んだり、どうにかしようともがいたり、それでもどうにもならなかったり、そういうとても個人的な戦いこそ、この物語のテーマなんだと思う。
『ブギーポップは笑わない』というタイトルの意味を知って、物語を読み終わってから、もう一度第一話を読み返すと感慨深いものがある。最初にして本質が書かれた話で、読み直した時にエピローグにもなるような形で書かれているのは絶妙。
そして、世界の存亡をかけた戦いの中心にあったのが、実は恋心であったり、人間の在り方だったというのが憎い演出だなと思う。ぼくたちが生きる現実でも、誰かにやさしくすること、笑いかけること、それが世界を救うことに繋がるのかもしれないよなと考えるのも楽しい。
- 感想投稿日 : 2011年11月12日
- 読了日 : 2011年11月12日
- 本棚登録日 : 2021年1月4日
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