嫌われ松子の一生 通常版 [DVD]

監督 : 中島哲也 
出演 : 中谷美紀  瑛太  伊勢谷友介  香川照之  市川実日子  黒沢あすか  柄本明 
  • アミューズソフトエンタテインメント
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4

「なんでぇぇぇっ!」
真っ直ぐ過ぎて、不器用で、
ただただ人に愛されたくて、
家族の愛情に気付かなくて、
ウルトラ弩級の不幸な人生を送った松子の一生を
中島監督お得意のポップでテンポのよい展開で
描きます。

自分のせいじゃないのに望まぬ理不尽な状況になることって、ある。
自分の気持ちを誤魔化しながら受け入れる人もいれば、飽くまで欲するものを求め続ける人もいる。
後者の人間の生き様の一例を示す作品だったと思います。
後者の生き方を貫く人間って多分少ないので、そんな人間の姿を見せるという点で、非日常を示すという映画のあるべきスタンスに則った作品だったと思います。

恐らく大多数の人間がしない、できない、真っ直ぐな生き方を貫いたヒロイン。そこに何らかの感じるものが人それぞれにある作品なのではないでしょうか。

とんでもなく暗い話ですが、中島監督のハイセンスと、主演 中谷美紀の美しすぎるお顔立ちで、現実離れしたファンタジー、ダークファンタジーに仕上がっていました。

最後、松子が天国への階段を登りながら、家族の元へ帰宅し、家族から温かく迎えられたシーンに、さんざん遠回りしたけど愛情を感じることができて良かったね、という気持ちになりました。

大きくなったら素敵な王子様と結婚すると
夢見ていた女の子 川尻松子。だけど、現実は、
教師をクビになって、家出して、
同棲相手の暴力に遭って、不倫相手に捨てられ、
ソープ嬢になり、ヒモを殺害、自殺未遂、そして
刑務所行き、ヤクザの女になって、
一人暮らしの引きこもりの果てに
53歳で河川敷で死体で発見された一生でした。

夢を見るのは自由だ。
でも、
その夢を叶え、幸福な人生を送れる奴なんて、
ほんの一握りだ。
だから、そうじゃないその他大勢は、
悲しいため息を吐くか、惨めに酔い潰れるか、
さっさと人生を終わらせるか、笑ってごまかすか
開き直って犯罪に走り、
片桐なぎさに追い詰められるか
どっちにしても、お先真っ暗で...
懐かしい声が、俺を呼んだような気がした。

このアパートのさ、鼻つまみもんでさ、
嫌われ松子って呼んでる奴もいたなぁ。あぁ。
ゴミの収集日は守んねぇし、
誰とも口聞かねぇし、
なんか体から変な匂いするしさぁ、
突然夜中にスッゴい声出して
暴れまわったりすんだぜ!アァァァって。
すぐそこの土手でよく見掛けたけど、
いっつも座って川見てたな。
じぃっと座ってさ、川 見つめながら
涙ポロポロ、ポロポロ流してさ。

どっちにして つまらん人生たい。

生れて すみません。

教師だよ。元々は中学校の先生で
歌が上手で 人気者だったらしい。

父は病弱な久美のことばかり可愛がり、
私はいつもひとりでした。
なんとか父に振り向いて欲しい、
父に愛されたいと
父の望む学校へ行き、父の望む職業を選び、
父の理想の娘になろうと努力しました。
それなのに...結局 私の努力は全て徒労でした。

どうすれば私 愛される子になれるの?

あっという間に 時代に追い抜かれちまった
でもお前のおかげで いい夢が見れたぜ
時代遅れでもなんでも
人間は生きて行かなきゃなんないからねぇ。
仙台帰って 小料理屋でもやるさ。

私が家を出た日からずっと、
父の日記の最後の一行は
同じ言葉で締め括られていました。
「松子からの 連絡なし」

小さい頃は誰でも
自分の未来がキラキラ輝いてるって思うでしょ?
でも大人になると
自分の思い通りになることなんて
ひとつもなくて、辛ぁくて、情けなくて...

女の子なら誰だって 白雪姫やシンデレラ
そんな可愛いおとぎ話に憧れるものさ
それがどこで歯車が狂っちまったか
白鳥に憧れてたのに 目覚めると
真っ黒なカラスになってました...なんて。
たった一度の、一回きりの人生なのに
おとぎ話なら 残酷過ぎるぜ。

家族に縁を切られ、
何人もの男と同棲して裏切られ、
トルコ嬢になってヒモを殺し刑務所に入った松子

人間の価値って 人に何をして貰ったかじゃなく
何をしてあげたかってことだよ。

曲げて、伸ばして、お星さまを掴もう
曲げて、背伸びして、お空に届こう
小さく、丸めて、風とお話しよう
大きく、広げて、お日さまを浴びよう
みんな、さよなら、また明日会おう
曲げて、伸ばして、お腹が空いたら帰ろう
うたを、歌って、おうちに帰ろう

松子おばさんのこと 神様だと 龍さんは言った
最後まで とことん不器用で
とことん不幸せだったこの人を 神様だと。

俺には神のことなんてわからない。
考えたこともない。

でも もしこの世に神様がいて
それが おばさんのように
人を笑わせ、人を元気づけ、人を愛し、
だけど自分はいつも ボロボロに傷付き、孤独で、
ファッションも全然イケてなくて、
そんな徹底的に鈍くさい人なら、
僕はその神様を、信じてもいいと思う。

お帰り 松子 、おねえちゃん お帰り

ただいま

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: コメディ
感想投稿日 : 2020年6月29日
読了日 : 2020年6月29日
本棚登録日 : 2020年6月29日

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