火垂るの墓 [DVD]

監督 : 高畑勲 
  • ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
4.08
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本棚登録 : 70
感想 : 11
3

無垢で健気な幼い女の子 節子。
なぜこの子が命を失わねばならなかったのか。

空襲で親を失い頼った遠い親戚に疎まれた清太は
親の貯金を頼りに、幼い妹 節子を連れ
使われない防空壕に兄妹2人で暮らし始めます。

清太14歳、節子4歳。
清太は節子の世話をしながら食糧を必死で集め、
節子は母の見様見真似をして
甲斐甲斐しく清太の面倒を見ようとします。
所詮おままごとなんだけどそこには確かに
兄妹2人の家族の暮らしがありました。

しかし社会から離脱し思うように食糧を得られず
やがて栄養失調で短い生涯を終えるのでした。

空襲で親を失わなかったら...
親戚の叔母が兄妹に慈悲を持って接してたら...
兄 清太が親戚に頭下げてたら...

学生時代にこの作品を初めて観た時は
なんで大人なのに兄妹に優しくしないんだ!
かわいい節子可哀想。清太も悔しかろうに。
辛い。辛すぎる。もう2度と観たくない。
と思いました。

あれから多分30年。
最近ジブリ作品を全部見直すことを始めました。
ところがこの作品は辛かったので
やはりなかなか手が延びなかったのですが、
他の作品をほとんど見てしまい、
ついに観念して観ることにしました。

あれ?思ってたほど憤らないぞ。辛くない?
少しは作品に向き合えるようにはなったかな?

結末を知ってる節子の健気さに心は痛むけど。
清太や親戚の叔母さん、街の大人たちの心情を
少し客観的に観れるようになってました。

清太!節子が衰弱してるのに何意地張ってんだ!
何なら親戚の叔母さんの気持ちも判らんくはない
嫌味な性格だけど叔母さんも粥で我慢してたし。
庶民と軍人家庭の格差にやっかんでたのかなとか
でも相手は子供なんだから、
子供を責めるなよとは思いましたけど。
この叔母さんが特別意地悪かと言えば、
そうとも言い切れない気がします。
一方、清太も海軍大尉の息子として父に恥じぬ様
一生懸命に意地を張ってた部分もあるのかな。

なんだかんだ色々考察はしてみますが、やはり
清太が節子との2人暮らしを決心した理由は、
たとえ生きていけなかったとしても、
両親がいた頃の様に思いやり支え合う家族だけで
暮らしたかったからなのだと思います。

やっぱり我が家はえぇなぁ。
懐かしい景色やわぁ。

挿入歌の「埴生の宿」はそういう歌ですね。

♪Home, Sweet Home(「埴生の宿」原曲意訳)
粗末なれど 我が家にまさる所なし
世界中探せど他に変わる所なし
愛すべき我が家よ 我が家が一番
我が家にまさる所なし

この作品は親戚の叔母さんの我が身大事な態度や
握り飯頬張りながら清太に米を売らない農家、
得意になって火事場泥棒を繰り返す清太など
綺麗事ではない人間の業を容赦なく描きます。

清太が野菜泥棒をして農夫にボコボコにされて
交番に突きだされた時の警官の粋な対応は、
この作品の数少ない良心のひとつでした。

事情は判った。善処するから引き取って宜しい。
そ、そやけど...
こんだけ殴りゃ気が済んだやろ?
未成年に対する暴行!傷害!
(剣を握り農夫を脅す)
ほ、ほな、よろしゅたのんまっさ...。
(慌てて走り去る農夫)
今夜の空襲 福井やったらしいな。
まあ奥で水でも一杯飲んだらどうや?

清太はその後も空襲で空き巣の家の火事場泥棒
を得意として食べ物を得続けます。
親を失くしこうして生き延びた子供達が
戦中戦後はたくさんいたのでしょうね。

蚊帳の中に入れ兄妹で見た蛍は光を放ち終えると
みなポトポトと落ちました。
翌朝、節子は大量の蛍の遺骸を集め埋葬します。
うち、おばちゃんにきいてん。
おかあちゃんも しにはって
おはかのなかにいてるねんて。

なんでホタルすぐしんでしまうん?

兄妹の母は空襲で被害にあった人達と、
清太は駅で行き倒れた人達と、
ひとまとめに火葬されました。
虫も人間も、生と死が目の前にあったんですね。

なかなかシビアな作品でしたが、
やはり最大の魅力は節子のかわいさでしょう。
かわいくてリアルな節子の声にやられました。
あの絵柄、たどたどしい声、幼児の関西弁。
純真無垢な4歳児 節子の声を担当した
白石綾乃さん(制作当時5歳11カ月)、
ブラボー!

余談ですが、人形を抱える節子の姿から、
「禁じられた遊び」の幼女ポーレットを
連想しました。

清太と節子は今も兄妹仲良く山の上から
三宮の街を見ているのでした。


♪Home, Sweet Home(「埴生の宿」原曲意訳)
宮殿での享楽もあろうが
粗末なれど 我が家にまさる所なし

そこでは天からの魅惑漂う
世界中探せど他に変わる所なし

愛すべき我が家よ 我が家が一番
我が家にまさる所なし

♪埴生の宿(作詞:里見義)
埴生の宿も わが宿
玉のよそい うらやまじ
のどかなりや 春のそら
花はあるじ 鳥は友
おお わが宿よ たのしとも たのもしや

ふみよむ窓も わが窓
瑠璃の床も うらやまじ
きよらなりや 秋の夜半(よわ)
月はあるじ むしは友
おお わが窓よ
たのしとも たのもしや

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ジブリ
感想投稿日 : 2021年9月4日
読了日 : 2021年9月4日
本棚登録日 : 2021年9月4日

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