そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社青い鳥文庫)

  • 講談社 (1994年2月15日発売)
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本棚登録 : 3105
感想 : 300

当時の読書好きの小学生の例に漏れず、私は青い鳥文庫がとにかく好きで、一時期の青い鳥文庫については本当に舐めるようにすべてを読みまくり、図書館の棚という棚を制覇していた。特に好きだったのが、女の子系の作品群の中では倉橋燿子(神)の『ペガサスの翼〜ドリーム・ファーム物語〜』シリーズ(都会の子供が田舎に行って超いろんなものと出会う話で名作なのに何故か『いちご』などと比べて存在感が薄い)で、ミステリー系の作品群の中では抜群にこの『夢水清志郎シリーズ』が好きだった。ミステリー系ではやはりパスワードシリーズが入りとしては妥当で、私も小学校3・4年生くらいまでは圧倒的にパスワードシリーズ派だったのだが、5年生くらいから夢水清志郎派に傾き、以後、怪盗クイーンや虹北恭介らへと進んでいき、そこからメフィスト系へ目覚め(本当に今思うと講談社って…)、奈須きのこや西尾維新を小学生の段階で全て網羅していった。今振り返ると漫画・アニメ以外のBLへと続く文学系オタク的感性の入り口として、夢水清志郎があったように思う。
パスワードシリーズが明るくて健康的でコナン的であるのに対して、夢水清志郎シリーズの魅力は何かと言われると、底の部分に小川のように流れているそこはかとない「寂しさの感覚」だと思う。ギャグもふんだんに盛り込まれていて笑えるのに、どこか寂しさを感じさせるのは、夢水清志郎というキャラクターが世間から外れてしまった人であること、そして作者が失われゆく子ども時代への憧憬をさりげなく散りばめてしまっていることが原因のように感じる。子ども向けなのに、どこか大人になってしまう予感を感じさせる小説たち。昔の私の心はそういうものに張り裂けんばかりに震えさせられていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2022年6月1日
読了日 : 2022年6月1日
本棚登録日 : 2022年6月1日

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