もちろん江藤淳の選評、そしてそれを常に引用する大塚英志の批評が好きだったので、元をたどらなければと漠然と思っていたのだけれど、どうにも引用されている文章を読むと男が描いた女の空虚さみたいなものがある気がしていて、読む気が起きていなかった。ところが、読み始めてみると失礼ながら意外にも(!)とても面白くて、あまりの面白さに驚いてしまった。そういえば、この本に対する女の意見みたいなものは読んだことがなかったことを思い出した。男が描く女に対して、男が「こんなものは女を描くとしてどうなんだ」と文句をつけていることが多々あるのだけれど、私は意外と、男が描く女の弱さに、時おり真に迫るものがある気がすることがあり、これもその一種だった。江藤淳はかつて、「女が男をよく書くときには嘘っぽくなるのに、嫌なところを描く筆はあまりに正確で迫力があって怖い」的なことを言っていたと思うけれど、私も時々これを思う。男が女を礼賛するときは嘘っぽくなるのに、女の弱さみたいなものを描くときに、自分の芯が見透かされたみたいな気がしてぞっとする。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2020年10月12日
- 読了日 : 2020年10月12日
- 本棚登録日 : 2020年10月12日
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