かつて子どもだったあなたと少年少女のため―がコンセプトの「講談社ミステリーランド」第二回配本の一冊。
執筆陣の顔ぶれは、確実に「かつて子どもだったあなた」向け。
内容はちゃんと「少年・少女」向きになっているようで、易しめ文章で漢字のほとんどは読みがな付きで、挿絵入り。
事件の解決を目指し活躍するのは、小学6年生の優希(ユー)と秀介。
ただし、やはり有栖川作品。
日常のナゾ系ではなく殺人事件が起こるし、解決はきっちりロジックで攻める。
児童書ゆえの物足りなさはあるものの、クローズド・サークルで密室で、と、なかなかのサービスっぷり。
秀介が読みかけの推理小説の内容を、登場人物の一人が話しすぎて読書の興を削がれる、という場面が冒頭からあるので、わたしも本書の内容はこれ以上は書かないでおくことにする。
ミステリーランドでは著者があとがき代わりに「わたしが子どもだったころ」というタイトルで文章を書いている。
有栖川氏は推理小説との出会いと推理小説に対する想いを書いておられるのだけど、これが本格推理に対する愛情が感じられ、またちょこっと書いておられる奥様のお話もとても微笑ましい。
そして最後には、読者である少年少女たちへの魅力的な誘いの言葉が書かれている。
ミステリーランドは、背だけでなく小口も開いている箱入りで、その箱は窓状の穴があり表紙絵の一部が見えるようになっている。これが絶妙な見え方で、眺めているだけでも楽しい。
「かつて子どもだったあなた」たち垂涎の豪華執筆陣の書き下ろし、しかも「シリーズコンセプト的にノベルス落ちや文庫落ちはしない」というウワサを信じて買い集めていたのに、ここ数年でいくつかノベルスや文庫になっている。
装丁が良いのでハードカバーで買って後悔はないが、ノベルス化・文庫化されたものも揃えたくなって困る。
- 感想投稿日 : 2013年3月16日
- 読了日 : 2013年3月15日
- 本棚登録日 : 2013年3月16日
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