図書館危機 図書館戦争シリーズ (3) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2011年5月25日発売)
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本棚登録 : 22066
感想 : 1045
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「ちょっと背伸びをした少女マンガ」だとか「私は小説でマンガを読みたくない」だとか、このシリーズに対して悪口を言いまくっているのを反省して、今回は褒めてみようと努力してみた。

そもそも面白くなければいくらなんでも買ってまで読みはしない。設定は「図書館戦争」のときに書いたので繰返さない。たとえそれが荒唐無稽のお話だとしても図書館が舞台の小説なんて、本好きには堪らない設定なのは間違いない。バックヤードの作業とか、レファレンスの基本とか、さりげなく出てくるのが面白いのですね。しかも、主人公たちは本の検閲から身体を張って表現の自由を守ろうとしているのだから、それだけでもう無条件に彼らに肩入れをする自分がいるわけです。

一方彼等は特殊部隊(タスクフォース)ですから、基本的に自衛隊の日常を描いているようなものです。これも今までの小説に無かった設定です。そういう知的好奇心をくすぐるところがあるわけですね。

今回は「言葉狩り」が大きなテーマとして出てきています。所謂「差別語」として規制されている言葉はどうして規制されているのか、という問題です。ここでは、「床屋」という言葉が差別語として入っていて、それを逆手に裁判を起こしてメディア良化委員会に一矢報いようとする展開です。

後であとがき見てびっくりしたのは現在でも「床屋」は自主規制語に入っているということ。多くの床屋さんは自分の職業の名前に誇りを持っている人も多いと思うだが、メディアというものは一旦誰かが「自主規制」をしだしたらその内容にはかまわずに「差別語」となっていく法則があるらしい。

恐ろしいことに、これは「いまそこにある危機」なんです。
みんなが、大震災や原発に心奪われ、TVが菅が辞めるか否かでどたばたしているときに、6月16日知らないうちに「コンピュータ監視法」なるものが参院法務委を通過した。ジャーナリストの堤美果さんは言っている。「9.11の教訓として、国民全体がパニックに陥っているときおかしな法律が通る。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: た行 フィクション
感想投稿日 : 2011年9月17日
読了日 : 2011年9月17日
本棚登録日 : 2011年9月17日

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