ぶらぶらヂンヂン古書の旅 (文春文庫 き 26-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年6月10日発売)
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感想 : 18
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第一章で彼は早くも岡山の万歩書店と倉敷の蟲文庫を訪ねている。岡山の有名な古本屋といえばやはりそれくらいなものか、と思いながらも私は蟲文庫を初めて訪ねた3年前の事を思い出す。

本を求めて行ったのではない。売りに行ったのである。私の家には立派な本棚はあるのだが、そこには三種類の百科事典や日本と海外の文学全集、タイム誌の二種類の全集、そしてLPレコード全集が幾つか、更には新平家物語初版本全巻と昭和30年代の単行本や文庫本が少々鎮座していた。言うまでもなく私の蔵本ではない。伯母から父、父から私に相続された一軒家に付随してついて来た代物である。二年間は手付かずだったが、やっと一大決心をして整理を始めた。百科事典は古書店も引き取らないことは知っていた。よって、あわよくばタイム誌全集、そしてこれは大丈夫、ちょうどNHK大河ドラマで平清盛をしていた平家物語をいい値段で買って貰おう、その他の小物はどれくらいの値がつくかな、と愉しみにして蟲文庫を訪ねたのである。

結果は1000円だった。しかも、タイム誌と平家物語は断られた。荷物になるから、と言っても預かってももらえなかった。私は闇雲に古書店に行ったのでは無い。ここならば本の値打ちがわかるだろうと、狙いを定めて行ったのである。初めて行って知ったのだが、蟲文庫は文学系はほとんど扱っていなかった。人文系や理科系を田中美穂店主のフィルターを通して集め、まるで雑貨を置くように古本を置いていた。「すみません、単行本はよっぽどのことがない限り引き取らないの」。確かに、12畳の土間の、民家を改造した店は狭い。選ばなくてはやっていけないだろう。それでも6冊ほどの文庫本単行本を1000円で買い取ってくれたのは、あとで思えば破格だった。今度は客として行きたいと思いながら果たせないでいる。

この本には人生に役立つようなウンチクは一切ない。活字を読める環境さえあれば幸せというような輩には勧めたい本である。
2014年12月17日読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: は行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2014年12月18日
読了日 : 2014年12月18日
本棚登録日 : 2014年12月18日

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