驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院 (2012年2月27日発売)
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感想 : 87
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良書です。介護従事者が読んでも、民俗学研究者が読んでも、私のような一般人が読んでも、驚きと示唆に富んでいます。

かつて民俗学のサークルを作り、フィールドワークの真似事をしていた私は、昭和30年代以降に日本の民俗は破壊し尽くされ、日本の過疎地の片隅に残滓しか残っていないと思っていた。

ところが、実に身近な「特別養護老人ホーム」の中に、豊かな民俗が残っており、しかもちゃんと介護の仕事をしながら引き出すことが出来る、むしろ有益である、という事実に先ず圧倒された。いわゆる「ボケ老人」の中に、何千年も培って来た日本人の知恵が残っている。

気鋭の民俗学者だった六車さんが35歳を過ぎて、どうして介護施設で働くようになったのかは結局書かれていない。どうやら女性としての「転機」があったことが示唆されているだけ。しかし、それだけにこの本は単なる福祉の技術論や民俗学研究書を超えて、人生への書になっていると思う。絶対、ドラマ化、或いは映画化するべきだ。
2014年12月20日読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: あ行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2014年12月23日
読了日 : 2014年12月23日
本棚登録日 : 2014年12月23日

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