帆船小説といえば必ず題名が上がる「ホーンブロワー」シリーズの作者であるセシル・スコット・フォレスターが第二次世界大戦の海戦を描いた作品。
第二次世界大戦の大西洋は、ドイツUボートが跳梁跋扈する恐るべき海域であった。
Uボート同士が連携して獲物を駆り立てるウルフパック(群狼)戦術により膨大な数の輸送船が撃沈され、英国の命運は風前の灯火であった。
物語は、まさにこの大西洋での厳しい戦いを扱っている。
37隻の輸送船団を護衛する僅か2隻の駆逐艦と2隻のコルベット艦が、Uボートの昼夜のない攻撃から船団を守り抜く三日間の死闘(まさに字義通り死闘という言葉がふさわしい)を描いている。
前頁が緊迫感に満ちており、どこから攻撃を仕掛けてくるかわからないUボートの恐怖感や、絶望感と極度の疲労の中においても勇敢に任務遂行をする男たちの戦いが、迫真の描写力で綴られる。
主人公である駆逐艦キーリング艦長ジョージ・クラウスの人物造形も興味深い、牧師の父を持ち、敬虔なキリスト教徒として育つ中で身に着けた厳しい義務と名誉に関する考え方や、いっぽうで私生活ではうまくいっていないなど。
作品世界に深みを与えるのは、登場人物の背景の複雑さとそこからくる独特の人生哲学だと思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年4月25日
- 読了日 : 2022年4月25日
- 本棚登録日 : 2022年4月25日
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