週末、森で

著者 :
  • 幻冬舎 (2009年10月1日発売)
4.02
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本棚登録 : 1144
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成り行きで、森の近くの田舎で暮らすことを決めた、「早川さん」と、都会で暮らす、彼女の友人、「マユミちゃん」と「せっちゃん」、三十代女性三人の人生模様を、飾らなく描いた四コマ風漫画。

ちなみに、飾らないというのは、田舎暮らしといっても、よくある、スローライフや自給自足とは、ちょっと違う、あくまで、早川さんのやりたいことをやるための人生ということで、飾らないからこそ、自然や人に対して、真摯に向き合っている一面も感じられるし、それは、マユミちゃんとせっちゃんの日常の辛さもそうで、特に、せっちゃんの、「ねえ、早川。あたしには、あたしに必要な全部がそなわっているのかな」には、私も実感したことがあるだけに、身に沁みました。

突然の早川さんの引っ越しに驚いた、他の二人は気になって、週末、早川さんの家に遊びに行き、森に連れて行ってもらうことで、少しずつ、自然の素晴らしさや、その魅力に気付いていく。

マユミちゃんは、出版社で14年間、経理ひとすじで、コツコツと弱音も吐かずに頑張っているせいか、周りの失敗や勤務態度を、必要以上に気にしてしまい、それでイライラが止まらない(その気持ち、よく分かる!)。

かたや、せっちゃんは旅行代理店で働き、他の仕事より、人と関わる機会が多いせいか(世の中って、本当いろんな人がいるのよ)、接客業の仕事をするようになって、少し人間が嫌いになったことを実感している(これも、よく分かる!)。

そんな、彼女たちの辛さや悲しみに、ふと寄り添ってくれるのが、森でふと口にした、早川さんの言葉たち(名言というには、数があまりに多すぎて、う~んというのもあるが、そこに人間らしさが)。

それは、自然にふれることで、人間の生き方にも、様々な可能性があることや、柔軟性を与えてくれるようにも感じられる。まるで、ブナの木のように。


『「人間」なんてひとりもいないのかも。「人間」って見るから命が軽くなってしまうんだ』
(「鳥」は「鳥」ではなく、それぞれに、ちゃんとした名前があることから)

『弱い光でも生きていける強さがあるんだね』

『35歳になってもまだまだ初体験あるね~』
「早川~~~っ たとえ森の中でもデカイ声で歳言うな~」

おっと、最後はマユミちゃんに突っ込まれたやつだった(そりゃそうだ)。これには私も大爆笑。

ただ、マユミちゃんにも、名言があって、

『子供がいなくても友は必要だね』

『知らない世界がいっぱいあるんだってことをわかるために大人になった気がするよ』

こう考えると、何歳になっても、人生楽しめそうでいいですよね(私は読んでいて、無性にカヤックに乗りたくなりました)。

また、自然にふれるだけでは無く、女性が共感できるやり取りが多かったのも印象的でした(だからこそ、より飾らなさが際立つ)。


「今のデジャブかと思ったけど、確実にわたしたち、3年間、同じ会話になってるよ」(クリスマスの予定が仕事)

「合コンって、世の中の誰がやっているんですか?」
「知るかい」

ちなみに、上記の解決策(?)にも、早川さんの言葉がきっかけとなっているのが面白く、また、マユミちゃんとせっちゃんが、上記の会話をしていたカフェでは、あの人が友情出演(!?)しており、こういう嬉しいサプライズが、また心憎いですよね(正直、びっくりしました)。

まあ、自然に興味の無いかたでも、読んでいる間は、ありふれた日常を離れられて、ちょっとした自由を感じられると思いますし、花や木や鳥の知識も得られるので、読み終えた後、森に行きたくなること、うけあいです。

とりあえず、私は、カヤックに乗りたくて、たまらなくなりました(将来の夢)。


なおなおさん、本書を教えて下さり、ありがとうございます(^_^)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2022年10月10日
読了日 : 2022年10月10日
本棚登録日 : 2022年10月10日

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コメント 12件

なおなおさんのコメント
2022/10/10

たださん、こんにちは。
素敵なレビューです(^^)♡
私も森に行ったりカヤックに乗ったりして、この三人が交した言葉を噛み締めたいです。
それを友人とやりたくて、親しい何人かにこの本をプレゼントしました^^;
続きの「きみの隣りで」もぜひ!

たださんのコメント
2022/10/10

なおなおさん、こんばんは。

素敵なコメントありがとうございます(^o^)

本書は、自然の素晴らしさだけではなく、それが人生に良い影響を与えることを教えてくれて、人間って、本来、自然と共に暮らしたくなる生き物なのでは、なんて思ってしまいました。

それから、森といえば、私が住んでいる、戸建て賃貸の近くにあるのですが、保護区域の看板があって、いつも外から眺めるだけ・・・しかし、入り口からは、踏みならした歩道ではなく、色々な草や木に覆われた、土の道が僅かに見えたり、鳥の鳴き声も聞こえてきて、たまに買い物帰りに、ふと立ち止まって、眺めていると、切なくなったり、嬉しくなったり、落ち着いたりと、様々な感情が湧き起こります(^_^)

なおなおさんが、本書をプレゼントしたくなる、お気持ち、よく分かりますし、これだけ、カヤックを魅力的に書いてあると、下手な初心者本より、いいなと思いまして、益田さん、カヤック協会(あるのかな?)から、表彰されたのではなんて、思ったりして。
いつか、カヤックに乗れるといいですね♪

それから、やっぱり続きがあるんですね!
あの唐突な終わり方、とても気になってたので、「きみの隣りで」、もちろん読みます(^o^)

なおなおさんのコメント
2022/10/10

たださん、お返事をありがとうございます。

たださんがお住い近くの森で、自然を感じる様子が伝わってきました。
文面からなんか切ない感情になってしまいましたよ(;_;)
そういえば私、"早川さん"の言葉を噛み締めたことがあるのを思い出しました。
この夏の暑い日に、メラメラと熱いアスファルトの道を歩いていて、同僚に早川さんの台詞を口にしていました。
「私たちって土の上を歩かないんですって」って。
カッコつけちゃった〜(*ノω・*)テヘ

カヤック協会(あるのかしら^^;!?)に、この本を置いてほしいですね!ナーンテ。

たださんのコメント
2022/10/11

なおなおさん、返事のお返事、ありがとうございます♪

なんだか、切なくさせてしまったようで、ごめんなさい(>_<)
まあ、そうした感情も抱くから、惹かれるものがあるのだと思うのですけどね。

ああ! まさに、本書でいうところの、最初に一本の木が、頭に浮かぶ、あれですね?
同僚の方の、リアクションが気になりますが(「へぇ~」とかで終わってなければいいですが)・・・あまりの熱さで、無意識に、早川さんの言葉を求められたのかもしれませんね。
でも、なおなおさんのレビューも、充分カッコいいですよ(ゝω・)

カヤック協会、実在しているか、調べていませんが、私の想像では、入ってすぐの目に付くところに、単行本と文庫それぞれが、立てかけてあるのではないかと、勝手に思ってます(^^;)

なおなおさんのコメント
2022/10/11

たださん、こんばんは。

「私たちって土の上を歩かないんですって」の同僚の返事は…
(少し考えてから)「確かに!ほんとだ〜」と関心を示してくれました(^^)v

冬にやりたいことがあります。
スキーに行く予定なのですが、雪の上に寝そべって、
「あたしたち、空を飛んでるんだよ」
「地上から○m高い所にいるんだよ」
と早川さんみたいに決め台詞を言いたいです(笑)
雪、積もりますように…꒰ღ˘◡˘ற꒱✯*

たださんのコメント
2022/10/12

なおなおさん、こんばんは(^_^)

同僚の方、真剣に考えてくれて、よかったですね。
もしかしたら、本書にも興味を持ってくれるかも、なんて。

スキーですか。開放的な大自然で滑るのは、爽快で気持ちよくて、楽しそうですよね(なんて書いておきながら、私は高いところ苦手なので、やらないのですが)。

それでは、早川さんたちみたいに実感するには、出来るだけ、たくさんの雪が積もるほど、空を飛んでいる感覚になるということで(こういうのって、積雪何センチとか、スキー場で分かるんですよね?)、私も、なおなおさんがスキーに行く日、雪が積もるように、一緒に祈っておりますので、思う存分、決め台詞を言って下さい(^o^)

それから、せっちゃんみたいに、雪うさぎを作るのも、可愛くていいかもしれませんね。

なおなおさんのコメント
2022/10/14

たださん、こんばんは。

今年のスキー場の雪、積もるようにお祈りをよろしくお願いします(笑)
ちなみに3年前は雪が降らず50cm、昨年は降り過ぎ(いずれも12月)でした。
そう言えば私、雪うさぎって作ったことないのでした^^;
作ってみようと思います。 ᙏ̤̫

たださんのコメント
2022/10/15

なおなおさん、こんばんは。

なかなか、上手くいかないものですね(>_<)

でも、きっと、今回の早川さんの決め台詞を、より感動的にするための、前フリなんだと思いますよ(せめて、雪うさぎは作れますように)。

世の中に絶対は無いと思いますので、お祈りの方は、どうぞ私にお任せあれ(^^ゞ

なおなおさんのコメント
2022/12/27

たださん、こんばんは。
報告です。スキーに行ってきました。
結局…
地上約0.2m高い所に飛びました^^;20cm…(;_;)雪不足で、帰る頃に本格的に降り積もり始めたのです(;_;)
でも雪だるまや雪うさぎを夢中になって作りました。その時に「あ!空を飛ぶんだった!」と本書とたださんを思い出し仰向けに寝転がりました(^^)気持ち良かったです。
翌朝、このスノーマン、どこかに行ってしまったようでいなくなりました(;_;)あの絵本のように^^;実際は雪で埋まってしまったようですが、心を込めて作った雪だるまに魂があるような気がするんですよね。離れる時にお別れの言葉を言っておいて良かった。
長々と失礼しました。

たださんのコメント
2022/12/28

なおなおさん、こんばんは。

長々と失礼なんて、とんでもございません。とても楽しみにしておりました(^^)

実はそろそろかなと気になってまして、大雪のニュースが流れていたので、どうかなと思っていたのですが・・そうでしたか。タイミングが少し合わなかったのですね(T_T)

それでも、雪だるまだけでなく、雪うさぎも作れたり、早川さんになりきることができて(決め台詞もバッチリだったのでしょうね)、私も、その楽しそうな光景を想像できそうで、素敵な思い出になったようで良かったですね(^^)

そうですよね、帰る頃に降り積もったということは、埋まったのかもしれませんが、人の思いを込めて作ったものに、何か宿ったような感覚というのは、そうした普段見慣れない遠い地にいるからこそ、尚更、強く感じるのかもしれませんし、別れ難いものがありますよね。

もしかして、今回、雪が積もりきらなかったのは、雪だるまがなおなおさんに、また来て欲しいと思っているからじゃないですか、なんていうのは、感傷的すぎますかね?

今後、また行く機会ができれば、きっと雪の積もる時も来ると、私は信じてますよ。

なおなおさんのコメント
2022/12/28

たださん、温かいお言葉をありがとうございます。
決め台詞、言えませんでした^^;何しろ20cmで所々に土も見えていたので(;_;)
我々のスノーマンは、雪で顔も優しく笑顔で仕上げ、周りのどの雪だるまよりも魂が宿っているようでした。
明日も会えそうだなと思ったらいなくなっており、彼が一晩かけて雪を降らせてくれたのかもしれませんね。最終日に数時間スキーを楽しんだのですが、滑っている時、リフトに乗っている時、彼のいた場所をちらちらと見てしまいました。
たださんのお言葉といい、我々のスノーマンといい、感傷的になりそう(;_;)(笑)

たださんのコメント
2022/12/29

なおなおさん
確かに、「地上から0.2m高い所にいるんだよ」では、笑い話になりそうですね。しかし、夢を見ている間の方が、案外楽しいのかもしれません。それにしても、神様は焦らせすぎですよね。

でも、数時間スキーをすることができて、良かったですね(^^)

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