ほんやのねこ (MOEのえほん)

  • 白泉社 (2018年11月16日発売)
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感想 : 64
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 これまでのシリーズでも重要なポジションを占めていた、「女主人」ねこが経営する本屋を訪れる、奇妙で愛らしい生き物達と彼女の交流を面白く描いた絵本。

 本書で新たに抱いた印象として、女主人の謎っぷりがあり、その毎回変わる素敵なファッションは、殆どがエプロンだけなのに、彼女の印象すら変えてしまうくらいのインパクトと、飾らないセンスの良さを感じさせられて、思わずオシャレしたくなる気持ちを駆り立てさせる程でありながら、何よりも活き活きとした、楽しそうな彼女の姿に、とても魅せられるものがあって、『オシャレは基本よ』の言葉にも確かな説得力を増してくれる(このヒグチさんの独特な書体も気にはなるが)。

 また、彼女の謎はそれだけでなく、他にも、生態不明のクチバシの生きものの言葉を理解できたり、ギュスターヴくんに臆することなく対抗できたりといった、頭脳と抜け目のない強かさも持ち合わせているのが、彼女の魅力を更にミステリアスなものへと昇華させているようであったが、それもそのはず。何故なら、彼女自ら『店主は魔法使い♡なんでもできるわよ』と言っているのだから、この個性、ますます魅力的である。

 それに加えて、本書はヒグチさんの本好きというか、本に対する拘りも見受けられて、それは絵の端々に見られる本のタイトルや(オカヒトデが星の王子さまを読んでいるのは、クスッとさせられたが)、カバーと見返しに描かれた、本が本を支えながら、どこまでも高く積み上がっていく中に、ヒグチさんのキャラクターもそれを支えている絵からも感じさせられて、改めてヒグチさんの魅力は、その奇抜さの中に漂う真摯な思いや拘りであることがよく分かる。

 そして、シリーズのファンにとって、最も喜ばしいことは、これまでに登場したキャラクターの後日譚を知ることが出来ることであり、それはニャンコやアノマロ(踏み台になった姿は健気だったね)は勿論、大きな旅のねこの犬や、そして、あの娘のその後も・・・これだけで私は、本書を読む価値が充分にあると思うのだが、最初にこれから読むと、奇抜さだけが先行し、やや拍子抜けする印象を抱くかもしれないので、是非、順番に読んで欲しいと思う。

 それから個人的には、前々から気になっていた、彼女が座っているものの謎が解明されたことが、地味ながらも嬉しくて、改めて世界は、不思議な面白いもので満たされている、素敵な可能性を垣間見た気持ちでいっぱいとなった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2023年11月5日
読了日 : 2023年11月5日
本棚登録日 : 2023年11月5日

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