このゆきだるま だーれ? (日本傑作絵本シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店 (1997年11月25日発売)
3.65
  • (19)
  • (31)
  • (49)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 600
感想 : 39
3

 岸田衿子さんと山脇百合子さんのコンビによる、絵本は、「ねこどけい」(2016年)以来となるが、先に発表されたのは、こちらであり(1997年)、対象年齢が2才からというのも肯ける、シンプルな内容に、岸田さんの歌うような韻を踏んだ言葉遊びが加わることで、読み聞かせも面白い作品だと思います。

 その持ちやすいコンパクトなサイズや、ミントブルーの見返しも可愛らしい本書の表紙には、雪の降るのを嬉しそうに眺める、「もみ」ちゃんの姿があり、いったい何がそんなに楽しみなのかというと・・・。

ちらら ほらら
ひらら はらら
ゆきが ふるふる

もみちゃん
そりが だーいすき

 というわけで、そりを引いて山の上を目指して歩く、もみちゃんを見た、動物たちも、いいな、いいなとばかりに、「乗ってもいい?」と集まって来て、総勢6名が、一台のそりに乗っかることになり、そんな一度にたくさん乗って大丈夫かなと思いつつも、そりは滑り始めた!

 すると、最初のジャンプで、りすくんが転がり落ちてしまい、その後も、そうした瘤やカーブなどで、一匹ずつ転がり落ちていき、結果、最後に残ったのは、もみちゃんだけになるという・・・まあ、取っ手を唯一掴んでたというのもあるんだけどね。

 でも、そんな転がっていく動物たちは、みんなどこか楽しそうで、その転がる度に雪が付く様子は、岸田さんの文章の配置で、どれだけその距離が長いのかも良く分かり、それはちょうど下記のような、

ころがって
        ころがって
                ころがって

といった坂を転がっているようなイメージを与えてくれて、もみちゃんが平らな地面で、やっと止まったと思ったら、そこには見たことのない、5体の雪だるまが見事に並んでおり、ここでちょっとだけ飛び出ているものをヒントに、はたしてどれが誰でしょうか? といったクイズ形式なのも、きっと子どもには楽しい時間になると共に、まだ雪を見たことのない子どもにとっては、雪だるま自体に、とても興味を持つきっかけになるのだろうと思いました。


 スズキコージさんと作った、「かぞえうたのほん」もそうでしたが、岸田さんの言葉遊びには、それぞれの読み手を想定して作っている感があり、それが本書の場合、小さい子どもに見合った、分かりやすい音の響きで楽しませる印象が強く、例えば、ぶたさんが落っこちて転がる描写には、

ころん すとん ぶー
ころころ すととん ぶー

となり、これが見た目が重そうなくまさんになると、

どすん ごろ ごろん
どてん ごろごろん
どすんこ どてんこ ど しん!

と、最後の「ど」と「しん」の間にタメを作って、まるで思い切り叩きつけられた、その音が聞こえてきそうな、迫力ある感じにしていて、これを読み聞かせで抑揚をつけてやれば、また面白いのではと思わせる、そんな子どもを楽しませたい気持ちが、こうした何気ない擬音に込められているのです。

 また、山脇百合子さんの絵には、私の好みもあるのかもしれないけど、なんで、こんなに心が洗われて癒されるのかなーと思いまして、そこには、もう物語の内容が、あまり関係ないようにも思われる中、ひとつ分かったことは、これは岸田さんだけでなく、あまんきみこさんも、そうなのですが、「ねこどけい」は別として、山脇さんと物語を作ると、皆さん大抵、動物たちの絵も人間と同じように、服を着て二本脚で歩くようにさせていて、それはまるで、山脇さんに、そのスタイルで是非描いてほしいようにも私には思われました。

 そして、それはもしかしたら、「ぐりとぐら」からずっと続いてきた、山脇さんの、動物も人間も等しい存在なのだという、そのどちらにも優しい眼差しが見事に絵となって表れた、本書の場合、その一緒に遊んでいる幸せいっぱいの姿に、皆さん惹かれているからなのだろうなと感じさせられて、上記では心配もしましたが、本当は、もみちゃんと動物たちが同じそりで、体を寄せ合いながら一緒に滑っている姿に、とても温かい感動を覚えていた私でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2023年12月8日
読了日 : 2023年12月8日
本棚登録日 : 2023年12月8日

みんなの感想をみる

コメント 2件

aoi-soraさんのコメント
2023/12/11

たださん、こんにちは^⁠_⁠^
この本をは子供達と繰り返し読んだ思い出の本です。

そうなんです、
歌うような言葉が心地よくて、何度も何度も声に出したくなるんですよね。
温かな感想をありがとうございます!素敵です(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)

たださんのコメント
2023/12/11

aoi-soraさん、こんばんは(^-^)

そんな思い出深い本だったなんて、読んでいる私も嬉しくなりました(´▽`)
確かに物語同様、『何度も滑りたくなる=何度も読みたくなる魅力』があると思いまして、きっとお子さんたちも、もみちゃんや動物たちと、そりに乗って一緒に滑っている感覚を味わっていたのでしょうね。

私が読んだら、もみちゃんと動物たちが仲良く遊んでいる姿に、何だか泣けてくるようで、素敵な絵本というのは、大人が読んでも心に訴え掛けるものがあることを、改めて実感させていただきました。

こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございます(*'▽'*)

ツイートする