物語のテーマは、いろんな愛の形について書かれたもの…
月曜日の抹茶カフェ 「木曜日にはココアを」の続編
2021.09発行。字の大きさは…小。2022.06.11~12読了。★★★★★
お気に入りの美味しいコーヒー、紅茶などを淹れてくれるマーブル・カフェから始まった人の輪が、つながっていく12編の連載超短編物語です。次々に繋がった物語が最初に戻ります。
「月曜日の抹茶カフェ(睦月・東京)」
一月。携帯ショップで働く美保26才は、マーブル・カフェにいってイベントとして行っていた、抹茶カフェで京都の茶問屋福居堂の一人息子・福居吉平(きっぺい)が点てたお茶を飲む。
「手紙を書くよ(如月・東京)」【注1】
二月。結婚して二年目の理沙は、ひろゆきが結婚前は手紙をくれたというが、ひろゆきは出した覚えがない。ひろゆきは、川沿いのランゼリーショブを訪ねた折に店主から、もしかすると二人のピンの位置が少しずれているのかと…。
「春先のツバメ(弥生・東京)」【注2】
三月。オーダーメイドのランゼリーショブ・ピー・バードの女主人は、初心がいかに大切かを知る。そして白のブラセットを買ったギターを背負ったツバメのような女の子は、「…私も、卒業のタイミングかな」と言って…。
「天窓から降る雨(卯月・東京)」【注3】【注4】
四月。ピー・バードで買った下着をつけた佐知29才は、一週間後に迫った雄介との結婚をキャンセルし。実家が京都の和菓子屋の娘・光都(みつ)と両国の入浴施設で、お風呂に入りながら開いた天窓から降る雨に。雨乞いをするように、光都は両手を合わせて拝んだ…。
「拍子木を鳴らして(皐月・京都)」
五月。三百年続く和菓子屋の橋野屋の一人娘・光都は、祖母に育てられた。光都が心配でついつい注意をするが。光都にとっては、ほめてくれず、何癖ばかりつける祖母と思っていたが。祖母が、心から光都を心配し、愛していることを知る。
「夏越の祓(水無月・京都)」【注5】
六月。橋野屋ではこの時期しか売らない菓子・水無月(みなづき)を買いに来た水無月裕司(ゆうじ)に祖母の橋野タヅ82才が、夏越の祓について由来を説明する。
「おじさんと短冊(文月・京都)」
七夕。古本屋のおじさんの所に来る白い猫。
「抜け巻探し(葉月・京都)」
八月。下鴨納涼古本まつりに出店したおじさん62才と妻・富貴子67才は、お互いに好きな仕事をして生活している。おじさんは、10年前に脱サラして儲かりそうもない古本屋を始める時に富貴子は何も言わなかった。そして今のあなたが好きと…。
「デルタの松の樹の下で(長月・京都)」
九月。大学生の孝晴は、長年探していた3巻綴りのマンガの2巻目を下鴨納涼古本まつりで買った。恋人の千景にふられた孝晴は、もう人生が終わったふうに思っていたが。見方を変えて自分を取り戻します。
「カンガルーが待っている(神無月・京都)」
十月。マーブル・カフェのマスターが、オーストラリア人を案内して自身が経営する画廊へ…。
「まぼろしのカマキリ(霜月・東京)」
十一月。ゆうくんが、カマキリを探していたら、カマキリの卵を見つけた。卵は、誰が育てるのか宮司さんに聞くと、「みんなが育てるんだよ」と。太陽。雲。風。樹。草。花。鳥。虫・・・・・・。ゆうくんも、みんなで育てているんだよ。
「吉日(師走・東京)」【注6】
十二月。茶問屋福居堂が、東京に支店をオープンさせる。福居吉平は、一月に抹茶カフェ―でお茶を点てた美保に会いたくて。美保に対してちゃんと誇れる自分でいたらまた会えると、いう言葉を信じて日々努力してオープンにこぎつけたら。涙を流した美保が、あの時に渡した手ぬぐいを返しに…。
【読後】
テンポがよく、次々と物語が繋がっていきます。そして、この人が次はどう繋がるのかと思いながら読み続けて行きます。読み終って、自分自身の楽しかったこと、悔しかったことと、いろんなことが思い返されます。
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【この言葉覚えておきたいな、といった言葉がよく出てきます】
【注1】思い出って、流れ流れてゆく時間を留めておくピンのようなものかもしれませんね。だけど留(とど)める場所は人それぞれだから、ピンの位置がちょっとずれちゃったりもするんですよ。38P 《この言葉はすごい。すごく好きな言葉です。》
【注2】卒業って、次のステージに行っておしまいじゃなくて、ここまでがんばってきたことをたどって自分で自分を認めたり、支えてくれた人たちにあらためて感謝したりの節目ってことでもあるんだわ。59P
【注3】仕事とは別に、人前でギターで歌うのが好きであった佐知が、後戻りできない亀裂が殻に入った一撃は、「東京でのライブ、あと何回できるかな」と言った私に雄介が返した答えだと思う。「そんなことより、英語の勉強しておけよ。歌なんかで食えるわけないのだし」。
私にとっては「そんなこと」じゃなかった。「歌なんか」じゃなかった。決定的なのはそこだった。もう無理だ、一緒にいられないと、はっきり心が決まった。73P
【注4】光都が「自分が一番大事だって感じることをちゃんと大事にできたんだから、それでいいんだよ。佐知は、思ったようにしていい。これからもずっと」。佐知の体の芯を揺さぶられた。歌うときにふるえるのと、同じ場所だった。
奥に隠し過ぎて、自分でも分からなくなっていた。それでいいんだよって、誰かにそう言ってもらいたかったこと。そしてそれはぜんぜん、恥ずかしくなんかないってことも。75P
【注5】そうどすなぁ。夏越の祓(はらえ)と言いましてな、昔のお公家さんは六月の終わりに氷を口に含んで暑気払いしてはったんですわ。これから来る夏のしんどさに立ち向かおうと、気合を入れたんやろな。そやけど、当時は氷やてえらい高級品やったから、とても庶民には食べられしまへんやろ。せやから、白いういろを三角に切って、水に見立てたんどす。113P~114P
【注6】その人に対してちゃんと誇れる自分でいたらまた会えるって、私は信じています。214P
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【木曜日にはココアを】
読もうとしてビックリしました。この本は「木曜日にはココアを」の続編です。すぐに「木曜日にはココアを」図書館に予約するために検索すると。多くの予約が入っているので。まずは「月曜日の抹茶カフェ」から読み始めます。
- 感想投稿日 : 2022年6月12日
- 読了日 : 2022年6月12日
- 本棚登録日 : 2022年5月26日
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