葉真中さんの作品なので大どんでん返しがあるのかなと思って読みましたが、本作は大きなそれではありませんでした。
社会派ミステリーに分類されるであろう本作は、引きこもりと8050問題を軸に描かれています。
相当に細かく取材や勉強をされたのでしょう、40~50代になるまで引きこもりを続けている人の心理描写はリアリティに富み、重く心にのしかかってくるものがありました。
本作には「自己責任」という過去の一時期に多用されたキーワードが登場し、引き込もっている本人が自身に向けて投げ掛けてもいますが、果たして全てが「自己責任」なのかと問われると答えに窮するのは確かです。
しかしながら、100%周囲の人間関係やその他の環境が原因かと言うとそうではなく、引きこもり問題の難しさを提示していると感じました。
さて、ミステリーとしては私自身がどんでん返しを期待して慎重に読み進めていたせいか、真相の半分は予測できていたためさしたる驚きはありませんでした。
ミステリーとしては普通ですが、引きこもりに係る描写と問題提起のクオリティの高さが際立つ一冊だと思います。
読むタイミングによって抱く感想が変わりそう。それくらい難しいテーマでした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
社会派
- 感想投稿日 : 2024年4月25日
- 読了日 : 2024年4月25日
- 本棚登録日 : 2024年4月25日
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