顔のない男: ピーター卿の事件簿2 (創元推理文庫 M セ 1-14)

  • 東京創元社 (2001年4月1日発売)
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・顔のない男
ピーター卿がシャーロック・ホームズばりに殺人事件の推理を新聞記事のみから行う。顔が傷だらけの死体というと身元を隠すための偽装や入れ替わりかと思うが、すぐに憎しみのためとされる。警察の捜査は常識的な範囲に終始するが、ピーター卿の推理は一見突拍子もないものだった。しかし、ピーター卿の推理のほうが事件の物的証拠に矛盾なく合うものだった。警察の推理どおりの結末を迎えるが、ピーター卿はあえて真相を明かさないのではないかという終り方だった。

・因業じじいの遺言
クロスワードパズル好きの資産家が亡くなり、その遺産を手に入れるためピーター卿がクロスワードパズルを解く手伝いをする。鍵と回答が文学的、イギリス文化に根ざしたようなものなので読んでも理解できない。

・ジョーカーの使い道
ピーター卿が恐喝者を罠にはめる。同じ恐喝者を追い詰めるハマースミスのうじ虫が思い起こされる。

・趣味の問題
毒ガスの製法をめぐってヨーロッパ各国がしのぎを削る。イギリスに譲ることになり個人的な知り合いとしてピーター卿が指名されるが、顔を知らないため各国が偽物者を送り込む。そこで、ワインの目利きとして有名なピーター卿を見極めるためワインの試飲を行う。

・白のクイーン
トランプやバックギャモンなどゲームにちなんだ扮装で行われた仮装舞踏会でおきる殺人事件。多くの登場人物の仮装と本名が入り乱れるため誰が誰だか見分けがつかなくなる。照明の色による見え方の違いを用いた錯覚をトリックに用いた犯罪だった。

・証拠に歯向かって
火事の跡から焼けた死体が発見される。自殺と判断されかけるが、歯の治療から捜査に加わったピーター卿により真相が明らかになる。歯の治療後から死体を偽装した歯科医が犯人だった。タイトルがおもしろい。

・歩く塔
チェスのルークと実際の塔とがリンクし夢の中で繋がる。そこに実際の殺人事件が絡み幻想的な雰囲気を作り出す。

・ジュリア・ウォレス殺し
現実に起こった事件を考察する作品。完全でない証拠、証言等から実際に起きたことを推理する。推理作家としての顔が随所に出てくる。

・探偵小説論
1928年に編まれたアンソロジーの序文。それ以前の探偵小説をまとめてある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 1920年代
感想投稿日 : 2016年3月26日
読了日 : 2016年3月26日
本棚登録日 : 2016年3月22日

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