この本は、「通説」と「真実」の2項目に分けて、少ない文字数で、やさしく表現しているので、とっても読みやすく、しかも内容は、常識を覆すような所があり、おもしろかった。
偶然、エコノミスト誌の『2050年の世界』と合わせて読んだので、よけいに理解しやすかった。
榊原氏の予測では、
2050年のGDP
1位 中国
2位 アメリカ
3位 インド
4位 日本
読んでて恐い話も出てくる。
ユーロ圏の財政危機から金融危機が発展するのではないかという懸念とは別のところで、世界同時不況という火種が燻っており、世界大恐慌が近づきつつある、とか。それは、中国が不況に陥ったとき。
また、閉鎖的な経済では、中央銀行の影響力は非常に大きいが、グローバル化した世界においては、日銀が単独でできることや、その影響力は限定的になる、という。各国の金融政策が協調した場合は別だが、一国の経済政策だけで一国の経済をコントロールするのはムリ、という説明は、オレもそう思っていた。白川元日銀総裁の「日銀のできることには限界がある」という説明は当たり前のことだと思うんだけど。
市場原理主義から国家資本主義へのシフトが始まる、という話には驚いた。中国のような国家によって制御される資本主義が、他国にも広がっていく可能性がある、というのだ。そういう話は、ホントかウソか知らないけど、はじめて聞いたよ。
「現在の日本経済はデフレではない」と断言してることに驚く。
消費者物価指数は下がっているが、それは電気製品や自動車などの耐久消費財の価格が下がったから。耐久諸費財の国内需要は飽和状態で、生産能力も向上しているので価格が下がるのは当然だという。食品などは、殆ど値下がりしていない。物価が下がっていることは、物価の安定と理解すべきだという。
日本銀行はゼロ金利を続けているし、相当量の量的緩和をしており、日銀の金融政策のせいで日本がデフレになっているというのはウソだ。
また、日本国債の格付けは間違いで、格付け会社は信用できないという。たしかに、オレも、アメリカの格付け会社の勝手な格付けはウサンくさいと思ってた。
それから、日本国債の暴落は当面考えられないそうだ。
榊原氏自身も、金融資産の殆どを日本国債の形で保有している、とのこと。おどろきー。
成長戦略はもういらない、というのは、ああ、そうなんだなと納得。
耐久消費財もインフラもいきわたり、人口は減り、グローバリゼーションも進展してる中で、新たな成長シナリオなど、そもそも時代錯誤なのだ。
読んでて、オレの考えてることが完全にひっくり返されたところもあるし、うすうす感じていたことが、明確に書かれてて、あーそうだったのか、と思ったところもあり、全体としては、読んで元気が出たよ。
- 感想投稿日 : 2013年3月21日
- 読了日 : 2013年3月21日
- 本棚登録日 : 2013年3月21日
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