ジョルジョ・アガンベンの著作を読んだのは初めてだが、思想表現としてのエッセイをこれほど巧みに駆使する思想家/批評家は稀ではないか。
人間が誕生の瞬間にその保護下に置かれる守護神とされる「ゲニウス」をテーマにしたエッセイをはじめ、本書は、写真の存在論に触れつつ(「審判の日」)、言語表現形式としての「パロディ」の起源や近代的主体(作者)論(「身振りとしての作者」)に迫るなど、様々な思想の断章(フラグメント)を積み重ねる。その一章一章は、それぞれの輝きを放ちながらも、がゆるやかに相互に関連し合い、隠された宇宙の秘密を暴き出し、思想の星座を形づくっている。それはかつてヴァルター・ベンヤミンが唱えた「コンステラツィオーン」のようだ。
最終章「映画史上最も美しい六分間」は僅か二ページの断章だが、これほどの強度と、躍動と、そして美しさに満ち溢れた思想表現は他にない。イタリア現代思想の豊饒さを窺い知ることのできた一冊。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
哲学
- 感想投稿日 : 2011年8月5日
- 読了日 : 2011年8月5日
- 本棚登録日 : 2011年8月5日
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