道誉なり 下巻 (中公文庫 き 17-5)

著者 :
  • 中央公論新社 (1999年2月1日発売)
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感想 : 20
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上巻のレビューでも書いたけど、足利尊氏が本当に魅力的。下巻はより魅力的。躁鬱傾向のあるリアルな造形に、師直を死なせ、直義を殺したことからくる凄味というか、開き直りというか、そういうのが加わって凄絶な妖気を帯びている。もはや人間を超えた、征夷大将軍という存在になってしまったかのよう。
道誉は破格の人間に見えて、常に冷静な語り部に徹している。うがった見方かもしれないが、グレートギャツビーの語り手とギャツビーのような、長いお別れのマーロウとテリーレノックスのような構図に見える。
中国の話よりもこの時期の南北朝の話の方が人間の複雑さにこだわっているように見えて、やはりこの時期の作品が好き。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年9月22日
読了日 : 2017年9月22日
本棚登録日 : 2017年9月22日

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