上巻に引き続き…
下巻では抑制や無抑制、愛や快楽、最後に総括に関する論考が収録されている。
特に、3種類の愛(フィリア)
「善ゆえの愛」
「快楽ゆえの愛」
「有用ゆえの愛」
に対する指摘は、そのまま鵜呑みにできずとも、自己と他者のあいだに広がる空間性を平易な言葉で表現できる知性に関心させられた。少し忸怩たる思いを抱いてしまう自分もいた。まだ、私には早かったのか?
善とはそれ自身で望まれ、欠如がないもの…
「人間は本性的にポリス的動物である」と提唱したのはアリストテレスであり、理想的な国制と私的利益を追及する国制の対比、前者から後者へ転落する筋書きも言及されていた。参政権は男性に限られていたり、現代とは違えど民主主義を掲げていた当時のアテナイが身近だったからこそ、詳細に描けた分類なのかもしれない。
巻末の解説では、アリストテレスに関する倫理学
(実際に倫理に関する書物とは言えないのかもしれないが)には、大倫理学とエウデモス倫理学、そして本書があり、相互に重層する内容も含まれているようである。古典の研究は共時的にも通時的にも、計り知れない深淵があると体感。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
古代哲学
- 感想投稿日 : 2023年5月7日
- 読了日 : 2023年4月29日
- 本棚登録日 : 2023年4月14日
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