スエズ運河を消せ: トリックで戦った男たち

  • 柏書房 (2011年10月1日発売)
3.71
  • (13)
  • (36)
  • (19)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 361
感想 : 37
4

奇術師一家のプリンスが志願してエジプトの砂漠に赴き、大学教授や偏屈な画家、腕利きの大工、パンチ誌に寄稿していた漫画家、若くハンサムで向こう見ずな二等兵らと「チーム」をつくり、エルヴィン・ロンメルを打ち負かす——とくると何から何までちょっとよくできすぎで、「ほんまかいな」と言いたくなる。
ジャスパー・マスケリンは(寡聞にして知らなかったが)実在の人物であるようだが、訳者あとがきにあるように、「小説仕立て」と考えておくのが妥当なのかもしれない。同じ一文にあるように、映画化されたら抜群に映えそうではあるが、さてどうなったのか。
ただ、そんなことはどうでもいいとも言える。紛れもない一大冒険活劇であり、「ストーリー」だ。100パーセントのフィクションであっても、人はしばしば魅了されるのだ。ならば100パーセントのノンフィクションでないからといって、切り捨てるには当たらない。
ジャスパー・マスケリンと彼の「マジック・ギャング」は、何もないところから二個師団を作り出し、川のない場所にドイツの戦艦を浮かべ、アレクサンドリア港を動かし、スエズ運河を消してみせた。
これらはみな、誇張ではない。掛け値なしの「真実」である。

2017/7/13〜7/14読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2017年7月15日
読了日 : 2017年7月14日
本棚登録日 : 2017年7月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする