Twelve Y.O. (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年6月15日発売)
3.42
  • (137)
  • (238)
  • (584)
  • (63)
  • (7)
本棚登録 : 2276
感想 : 206
4

個人的には「川の深さは」のほうが好きですねぇ……
「川の深さは」と比べて、タイトルの持つ言葉の力が弱いように思います。
以降、川の深さははと比較して感想を書きますが、

物語の構成のためなのか、「12歳」という言葉が身近に感じられない。
物語の四分の三ほどが、その言葉は日本という国の幼稚性をさして使われているように感じられるのです。
実際、前半分くらいは日本という国がアメリカとの関係において子どものように自身を扱い、大人として独り立ちすることを拒んできた、としかかかれていなかったような。
感情移入がしづらいのです。
日本というスケールのでかさ、東馬がなぜ日本をあそこまで必死になって独り立ちさせたがるのか、理解できない。
後半になってそこの部分の種明かしはされるのですが、のめりこめるタイミングが遅くなってしまうのは仕方ないと思います。
後、キャラクターが多い、かな?
「川の深さは」でもヤクザはいらないよ、と思ったくらいですが(二階堂さんすみませぬ……!)、こちらは特別不必要と感じるキャラクターはいないものの、その分出張ってこれるキャラクターが多くなっている。
読者がこのキャラクターを追いかけよう! と思って追いかけていると、別のキャラクターが出てきて、じゃあ、そっちを追いかけるか、となってしまう感じ。
感情移入による完全燃焼が「川の深さは」と比べてやりづらい。

ですが、この、中年で社会にもまれて未来を見失ったおじさんが、若い少年少女の心意気に惹かれて熱い心を取り戻すという構図が踏襲されている他、いいお年になられたかたがたも存分に熱い心を持っていて、ラストでそれが明かされていくのは読んでいて気持ちがよかったです。
(心に火がともるのが遅かったのもあるけれど)
スケールも、「川の深さは」よりはバージョンアップしたのかなあ?
グソウとかも出てきたし、アクションは控えめだけど、規模はでかくなったようには思いまするな。
個人的には個人戦のほうが好みだけれどもさ。
世に出たのはどっちが先かは知りませんが、あとがきを読む限り「川の深さは」のほうが先にかかれてるっぽいのでそれを踏まえて書いてますが。

なんかアマゾン写真の帯に「真夏のミステリーズ」とかかれてますが、確かにミステリー。
ミステリーって謎解きがされていくころあいから登場人物の真情とかがよく見渡せて、今まで見えなかった分、「ああ、あのときのあれはそういう意味だったのか」と心に迫ってくるのが味だと思います。
古典的な、現代科学の前だと謎でも何でもないようなものを題材にしたミステリーは物理的トリックのほうに重点が置かれていて好きくないのですが、こういうタイプのミステリーは好きです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2009年1月11日
読了日 : 2009年1月11日
本棚登録日 : 2009年1月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする