端的に感想言うと思っていたよりずっと面白かった。
内容としては、戦時下にナチスに略奪された伯母・アデーレの肖像画を正当な持ち主である自分に返して欲しいと、友人の息子である駆け出し弁護士(帰化三世)と共に82歳の女性マリアがオーストリア政府を訴えるという、実話をベースにしたお話。
アデーレの肖像は“オーストリアのモナリザ”と言われ、国の美術館に長年飾られてきた顔とも言える作品。クリムトの名画。
そのため、政府はマリアの訴えを受け入れず、マリアは政府と対立することに。
観るまでは現代での裁判に関係する話しがメインかと思いきや、実際は過去と現在、アメリカとオーストリアを何度も行き来する。
マリアが取り戻したかったものはなにか?
半世紀経てども思い出すことも辛い、ナチス政権下での差別の時代。
その中で不当に奪われていく平和な日々。
亡命するに至って、過去にそして祖国に置いて行かざるをえなかったものが沢山あった。
共に国を出ることが出来なかった両親や亡き伯母・アデーレ、家族達と過ごした大切な記憶や幸せな時間が置き去りにされている。
マリアにとって伯母の肖像画は名高い名画などではない。
そこに生きていた確固たる証なのだ。
肖像画を取り戻して行く中でマリアだけではなく、帰化三世である弁護士のランディは自分のルーツをオーストリアに見いだしたりなど様々な人が、1枚の絵に関わることで変化して行く。
華やかな過去、辛い日々を過ごした戦時下、それを乗り越え凛とした姿で生きる現代。
一人の女性の数奇な生き様を描いた素晴らしい作品。
- 感想投稿日 : 2016年6月3日
- 読了日 : 2016年6月3日
- 本棚登録日 : 2016年6月3日
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