表題作の「かわいそうだね?」と「亜美ちゃんは美人」の2本収録。
個人的には後者のほうが印象に残ったというか、女性作家だから描けた世界観だ、と感じた。
表題作は、主人公・樹理恵の恋人・隆大が、求職中の元恋人・アキヨをアパートに居候させると言い出すところから始まる。
樹理恵は仕方なくそれを受け入れたものの、隆大を信じたい気持ちと疑ってしまう気持ちの狭間で揺れ動く。
樹理恵はごく普通の感覚を持っている、ときっと大抵の女性が感じるはず。彼氏が元カノと同居なんで有り得ないし、本当にやましいことがないとしても疑ってしまうのは当然のこと。
実際、隆大はボランティア精神溢れるただのお人好しなのだろうけど、あなどれないのは元カノのアキヨで、「本当に何もないですよ」と樹理恵に対しても友好的な態度を取りつつ、裏で何をしでかすか分からないタイプの怖い女。
「でも男はこういう女に騙されちゃうんだよねぇ、ほんと不思議」と、女性たちの間でしばしば話題に上るような。弱々しく見えて、ちょっとだらしない、そういう女のアキヨ。
女性からすると、しっかり者で常識的な樹理恵のほうがよほど素敵に見えるけれど、男の視点というのはよく分からない。(男の人の好みも人それぞれとは思うけど)
もうこれは、「かわいそうだね」と言うしかない。そうしか生きられない女に対して。
それは樹理恵からアキヨへ、もそうだけど、その逆も然りなのかも。みんな自分の生き方が正しいと思っているから。
「亜美ちゃんは美人」は、幼いころからちやほやされ続けて生きてきた亜美ちゃんの親友・サカキちゃん視点の物語。
サカキちゃんもそこそこ綺麗なほうなのに、いつも隣に亜美ちゃんがいることでそれがかすんでしまい、いつも亜美ちゃんの引き立て役になってしまう。
天然美人の亜美ちゃんはそのことでサカキちゃんが傷ついていることに気付かず、彼女らを観察していたとある登場人物だけが2人の複雑な関係性に気付く。
ちやほやされ続けた美人と、引き立て役を引き受け続けてきたそこそこの美人。
最後に幸せになるのはどちらなのか、そして彼女らにとっての幸せとは一体どういうものなのか。
「美人は自然と愛されてしまうから、自分から愛することに飢えている」という、思わず納得してしまう、綿矢りさの観察眼があっぱれだった。
- 感想投稿日 : 2017年6月8日
- 読了日 : 2017年6月8日
- 本棚登録日 : 2017年6月8日
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