戦場のコックたち

著者 :
  • 東京創元社 (2015年8月29日発売)
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本棚登録 : 2246
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第二次世界大戦。欧州戦線に配属された
兵士たちの戦いを描く。主人公ティモシー(ティム)
(通称キッド)の特技(コック)兵の日常。

コックたち、とあったので戦時下などにおける
料理などの話かと軽く考えていたのですが
軍隊におけるコックの立場などがメインでした。
日常の謎というミステリのカテゴリーはあれど
戦場という非日常における日常の謎、
というのは新しいように思います。

さっきまでバカ話をしていた仲間があっけなく死ぬ。
それが戦争であり戦場であると
わかって読んでいてもやはり辛いです。
傷病兵の闇、過去から逃れられない帰還兵、
軍から逃れられない仲間の過去、戦争孤児。
ごく普通の若者が人を殺し、殺されるうちに
狂気に呑まれていく。

優しくてどこか甘くて仲間からも「キッド」と
呼ばれ、からかわれていたティムが
「自分たちの仲間を殺したやつらだから
無抵抗でも殺して当然なんだ」という思想に
たどり着いてしまう姿はとても辛かったです。
冷静で頭のいいホームズ的存在のエド。
そのワトスン役だったティムが最後には
しっかりと自分の足で立つようになる姿。

一瞬、作者さんは日本人だよね…?と
確認したくなるほど、第二次世界大戦末期の
米軍についてしっかりと書かれているので
読み応えがあります。
前作もナチスの話が絡んでいたので
このあたりの時代の知識の深い作家さん
なのでしょうか…オーブランの時から
気になっていたので、これからも新作を
楽しみにしています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年10月1日
読了日 : 2015年10月1日
本棚登録日 : 2015年10月1日

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