殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2018年10月10日発売)
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本棚登録 : 695
感想 : 51
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初読みの作家さん、書店のポップに惹かれ購入、読み応えのある佳作であった。


特殊設定が前提にある、主人公は前向性健忘症なる精神疾患があり、記憶が数時間しか保持できない、ということ。つまりは夜眠って起きたら昨日の記憶は全くない!とのことである。そして悪役には超能力が備わっている、他人の記憶改竄が可能なのである、発動条件があり、触れた状態で「言葉」で言い聞かせる。ということらしい。悪役は徹底的にクソ野郎であり、能力を使ってありとあらゆる犯罪に手を染めている。記憶改竄によって容疑者にもならない、目撃者の記憶を消す、被害者の記憶を消す、やりたい放題である。この完全犯罪能力を持つクソ野郎の天敵とないうるのが、記憶の保持ができない主人公である、つまりは改竄する記憶がないゆえクソ野郎の術には陥らないのである。


この設定を踏まえた上で、主人公vsクソ野郎の戦いが非常に緻密に描かれている、元来知性に溢れ応用力の高い主人公であるが、失われた記憶を補完するものとして「ノート」を持ち歩いている。これを唯一の武器としていくのだが、クソ野郎もそれなりに頭のキレは良く、観察眼にも優れている。斯くしてそのバトルは息詰まる展開で読者を飽きさせない、最終局面においても読みあい騙しあいの末のどんでん返しが見事であった。


総じて満足できる内容だったのだが、イマイチすっきりしない部分があった。よくよく調べてみると、この記憶が持たない主人公をシリーズとして、幾作かが存在するとのことであった。


機会があればそちらへも行ってみたいと思う、そう思える出来栄えであった。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: その他国内
感想投稿日 : 2022年3月31日
本棚登録日 : 2022年3月15日

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