道徳の系譜 (岩波文庫 青 639-4)

  • 岩波書店 (1964年10月16日発売)
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感想 : 49
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ニーチェには読者を煽るような文句が多い。それに流されて、ある種の人間はルサンチマンである、また別種の有り様は超人であるなどと、人間の高低の判別を説いているのだと思ってしまっていた。
しかし、この本を読んで、ニーチェが人類について、特にその進化についての議論をしていると気づいてからは、その捉え方が変わった。ニーチェは、ルサンチマンを生み出す禁欲主義的理想について、「禁欲主義的理想は人類に一つの意義を提供したのだ!それがこれまで唯一の意義であった。何らかの意義を有するということは、全く意義を有しないということよりはましである。わけても禁欲主義的理想は、確かにこれまでに存在した限りでの優れた《間に合わせ》であった。」(p270)と述べる。この《間に合わせ》が破綻したのが、神は死んだ時代であり、その先にツァラトゥストラがおり、超人の理想世界がある。
こういう風にニーチェが読めるのだと気づいて、初めて思想家としてのニーチェを感じた。以前は、説教臭い狂人のイメージがあった。AだかBだかしらないが人間や民族を区分し、悦に浸る思考とは、スケールの違う平原が原著にはあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2020年6月21日
読了日 : 2020年6月21日
本棚登録日 : 2020年6月21日

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