D坂の殺人事件

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  • 2016年3月15日発売
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まず私がこの「D坂の殺人事件」という作品を選んだ理由は、少し怪奇的な題名に惹かれたからです。江戸川乱歩は推理作家で、三重県名張市に生まれました。本名は平井太郎といい、早稲田大学政経学部の出身です。ペンネームの江戸川乱歩はアメリカの作家エドガー・アラン・ポーからとったと言われています。江戸川乱歩という作家のことはもともと知っていて、今までに「人間椅子」を読んだことがありました。D坂の殺人事件も人間椅子と同じミステリーのような雰囲気があるように感じました。『D坂の殺人事件』は乱歩自身も代表作として自負していて、1925年に『新青年』に掲載されました。この作品の舞台となったのは東京都文京区千駄木の団子坂だそうです。登場人物は私(主人公)、明智小五郎、古本屋の妻、古本屋の主人、そば屋の妻、そば屋の主人、アイスクリーム屋の主人、菓子屋の主人、工業学校の生徒たち、小林刑事です。本書は、主人公がカフェでコーヒーをすすっている場面から始まります。しばらくすると、主人公と明智小五郎が合流します。二人が楽しく談笑していると、カフェの前の古本屋のふすまが閉まり、誰も店番をしなくなりました。異様な雰囲気を感じた二人は、古本屋に駆け付けます。しかし、駆け付けるのが一歩遅かったのか、そこには、古本屋の奥さんの遺体がありました。その後、犯人の目撃者は、事情聴取で犯人の特徴を話します。主人公はその証言を聞いて少し引っかかる点がありました。それは明智小五郎の着物と犯人の特徴が似ているところです。しかし、様々な操作を進めると犯人は明智小五郎ではないことが分かりました。何と犯人はそば屋の主人だったのです。私は、この終わり方に非常に衝撃を受けました。人間椅子の結末は個人的にモヤモヤが残される感じであまり好みではなかったので、D坂の殺人事件の結末は王道なミステリーの結末という感じがしました。展開も非常にテンポよく進んでいき、読みやすかったと思います。私はこの作品で印象に残ったセリフがあります。それは物語内で明智が放った「物質的な証拠はあてにならない」というセリフです。私は、今までに証拠がないと訴えられないという話や、逮捕状が出せないという話を耳にしたことがありました。そのくらい物質的証拠は事件解決において絶対的なものだと考えていました。しかし明智はその論を覆す発言をしていました。個人的に、この作品で作者が伝えたいことは「論より証拠」ならぬ「証拠より論」という事なのだと考えました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月29日
読了日 : 2021年7月29日
本棚登録日 : 2021年7月29日

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