木皿泉さんといえば、クスッと笑えるけれど、なんともいえない奥深いものを残してくれるドラマや小説…といったイメージ、それにこの表紙から、もう楽しむ気満々で読み始めました。
でも、今回の木皿泉さんは全然違う!
人間そっくりのロボットが職場や学校に入り込み、イジメや虐待がないか監視している、それがカゲロボ。
読み始めは都市伝説のようだったカゲロボ。
それがどんどん読み進めていくうちに、世にも奇妙な物語的な世界観になったり、ものすごく現実的っぽかったり…。
短編集で、それぞれのお話でカゲロボは違う形で登場してくるのですが、人間の弱かったり狡かったりする心を抉ってくるのです。全くクスッとはできません。
作中、何度か苦しみの象徴に蓋をして、縫い込み、見えなくしてしまうという場面が出てきます。それは、ザックリと開いた傷口を縫って、もう一度やり直せということ。小説家はいつも針と糸を持ち歩いて、破れたところを見つけたら、とにかく縫うのが仕事だと。
だから私はいつも小説に救われているんだなぁと、そんな風に思いました。
カゲロボは本当にいたのか?自分自身が作り上げた幻想なのか?なんとも不思議なお話でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年12月20日
- 読了日 : 2023年12月20日
- 本棚登録日 : 2023年12月20日
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