鍵 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1996年12月12日発売)
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感想 : 88
4

昨日は暑いと思ったら、日中35度の猛暑日でした。今日も既に室温は30度で、このパソコン部屋に逃げてきました。狭い3畳ですし、少々温度設定が高めでもエアコンが効きます。少しでもエコ生活を考えて、こまめにON、OFFです。
窓を閉めていますが、蝉の声が聞こえてきます。暑くるしくても夏は蝉の声がしなくては淋しいです。いつか蝉がうるさ過ぎて大騒音になるので、近くの木を切って欲しいと言うような声が新聞に載っていました。どの位の数の蝉が頑張っているのかと、気の毒やらおかしいやらでしたm(_ _;)m

待合室でシニア川柳を読んでいました。

「目には蚊耳には蝉を飼っている」
 
はぁはぁなるほどと思いました。最近本を読みすぎると少し目が充血しますし、ベッドにパタンと倒れこんだら耳がジンジン言います。蚊や蝉を飼う様になったら困るなと身につまされました。

前に読んだサラリーマン川柳に

「会議終え暖簾の下で本会議」

と言うのもありました。お酒はそんなに飲めませんが、一杯のビールに上司をツマミにして盛り上がりました。今でも似たようなことはやっていますが(笑)




乃南アサさんの「鍵」です。

面白かった。ミステリの部分もあるが、少し砕けた家庭小説で、両親をなくして残った三兄弟の絆がメインになっている。
西家の長女は結婚を前にして、踏ん切りがつかないでいる。
下の長男俊太郎は25歳、大手商社を三年でやめ、今は管理人生活。耳の不自由な妹が生まれてから、母の愛情は全て妹に移ってしまったという、心の底に意志では解決できない小さな寂しさと、自己矛盾を抱えている。
俊太郎の古くからの友人で、有作と言う新聞記者が一家の心の支えになっている。
そして末の妹、麻里子は耳が不自由に生まれついた。母親の献身的な教育で、ゆっくりなら言葉も分かるが、発音が少し独特で、余り早く話せない。

周りで通り魔があらわれる。若い娘を狙って持っているかばんをひったくって、裂いて捨てるというもので、家の周りに頻発しているので、俊太郎も気が気ではない。記者の有作はスクープ記事にしようと張り切っているが、姉妹の帰宅時間も気になる。

ところが、電車のなかで追いかけられた男が、麻里子のかばんに鍵を入れていた。
それが原因ではないかとうすうす気がついてくる。
しかし、高校生になった麻里子は重荷になっているような自分が、兄弟に自立していることを知らせたい、それで「鍵」のことを相談できないでいる。出来れば自分で解決したいと思う。

警察も捜査範囲を狭めていたとき、殺人事件が起きる。殺されたのは麻里子のかばんに「鍵」を入れた男だった。
だがその後、殺人事件が続いて起きる。
「鍵」を持って一人で聞き込みを始めた麻里子もやがて事件の筋が見えてくる。

そして、犯人とおぼしい人に面会に行く。

麻里子の行動の影で、俊太郎は兄としての責任に目覚めていく。
これが家族が徐々にまとまっていく切っ掛けだった。

麻里子が襲われ、事件を最もはっきりと見てきた勇作が現場に駆けつける。
麻里子の命が懸った大事件が起きるが、それはまるでサブスートーリーのようで、三人兄弟+1のタッグが事件を解決する。
怪我をした麻里子を気遣いながら、その後それぞれの生活を見直し新たな出発をする。

柔らかい、読みやすい物語で、傑作と言わないまでも、きちんとポイントを捕らえてヒントもちりばめてある。さすが出来上がった作品で、時間があれば読み返してみてもいいくらいの、面白い一冊だった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内ミステリ
感想投稿日 : 2019年12月29日
読了日 : 2019年12月29日
本棚登録日 : 2019年11月29日

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