櫛挽道守 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2016年11月18日発売)
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感想 : 40
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第9回中央公論文芸賞、第27回柴田錬三郎賞、第8回親鸞賞を受賞作 評価の高い本がやっと来たので、読みかけのものを置いて読んでみた。
まず作者が女性と言うのを知った。
作品は、女性の生き方が主なストーリーになっている。

中仙道、木曽の山中にある藪原宿の集落が舞台。名人といわれる櫛挽職人の父を持つお登瀬の、櫛作りにかけた一途な半生が感動的に描かれている。

女の人生のが、より不自由に決められ、それに縛られていた幕末の頃、世間並みの生き方を捨ててでも、尊敬する父親の背を見て、櫛引の技を極めるために生ていくお登瀬の成長物語になっている。

頼みの弟が早逝し、て家族の絆が破綻してくる。そんな中で、お登瀬は年頃になって、世話人が持ってきた条件のいい結婚も断り、人々から阻害され始める。

無骨な父親に弟子入りを志願してきた若者とともに、家業を継いで、櫛挽きの技を受け継いでいく。
激動の時代を背景に、人の往来からわずかな文化が入り込んでくるような集落で、村の行事や風物を織りこみ、お登瀬の人生が、爽やかに力強く描かれている。

自分で作った物語を絵にしてひそかに売っていた弟。窮屈な暮らしから逃げ出したが、やはり逃げ切れなかった妹、名人の技を慕ってきた弟子、出自を嫌って動いていく時代に飲み込まれた弟の幼馴染。

登場人物も夫々面白くお登瀬に絡んでいく。
   
読みやすいが力のこもった作品だった。  

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸
感想投稿日 : 2020年1月21日
読了日 : 2020年1月21日
本棚登録日 : 2019年12月2日

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