中原中也全詩集 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2007年10月24日発売)
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トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は静かです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです

吁!案山子はないかーあるまい
馬嘶くかー嘶きもしまい
ただただ月の光のヌメランとするままに
従順なのは 春の日の夕暮か
    (「春の日の夕暮」より)

幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
 今夜此処での一とさかり
  今夜此処での一とさかり

サーカス小屋は高い梁
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

面倒さに手を垂れて
 汚れ木綿の屋根のもと

 ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
 安いリボンと息を吐き
      (「サーカス」より)

汚れちまった悲しみに
今日も小雪のふりかかる
汚れちまった悲しみに
今日も風邪さへ吹きすぎる

汚れちまった悲しみは
たとえば狐の革衣
汚れちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる
  (「汚れちまった悲しみに…」より)

菜の花畑で眠っているのは…
菜の花畑で吹かれているのは…
赤ン坊ではないでせうか?

いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です
ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です
菜の花畑に眠っているのは、赤ン坊ですけど
  (「春と赤ン坊」より)

 高校の国語で出会った中原中也。
悲しい青春の歌。喪失の歌。美しい日本語。リズム。大正モダン。やっぱりいいです。
 最近よく聴くブルーハーツのギタリストで歌詞も半分くらい書いていた真島昌利さんが中原中也を好きと知って、詩集を読んでみました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年3月1日
読了日 : 2023年3月1日
本棚登録日 : 2023年3月1日

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