連城三紀彦さんのことは、地球っこさんのブックリストで知りました。何にそんなに惹かれたかというと、ずばり、この〈連城三紀彦〉さんという、お名前。〈三国連太郎〉とちょっと似てるような…けど、もっと華があってなんか流れるようにしなやかで、影もあるんですよね。ペンネームだそうです。お写真を拝見するとちょっとユースケ・サンタマリアさんに似ていると思いました。残念ながらもう他界されているそうです。
さて、作品ですが、〈口紅〉や〈マニキュア〉など、ささやかな紅色がよくモチーフとして使われています。
私が一番印象に残ったのは、「恋文」という作品で、子供のような年下の旦那が主人公の女のお気に入りのマニキュアで窓ガラスに桜の花びらの絵を描いて、出て行ってしまったお話です。その旦那は結婚前に付き合っていた女が病気で余命半年ほどだと知らされ、その女と一緒にいてやるために、奥さんに「離婚してくれ」と頼むのです。「どうして離婚までしなければならないの」……一人部屋に残され悩む彼女の所に西日が差して、窓ガラスに描かれた桜の花びらが流れるようなピンクの光を投げかけるのです。色々な形の“恋文”があるのです。
「ピエロ」という作品も好きです。(ネタバレ御免)美容師の妻のために、喜んで会社を辞め、持ち前の“人の心を掴む”才能で次々とお客さんを開拓し、トラブル時にも自分のせいにして頭を下げて丸く解決し、店の掃除など喜んで一手に引き受けてくれた夫。そんな夫を裏切り、浮気をしてしまった妻が「浮気をしてきた」と正直に話しても、相変わらず「俺ならいいよ」とピエロのような顔で答える人の良すぎる夫に腹が立った妻。だけど「俺もさつっきまで良子(若い従業員)の部屋にいたんだ。」という夫。騙された…道化のような顔をして、ちゃっかり妻をだまし続けていたなんて…。だけど夫が出ていったあと一人になってしばらくして、彼の本当の優しさと愛情に気づくのです。
「大人になるということは、嘘がつけるようになるということ」と、「私の叔父さん」の“叔父さん”は言います。世代なのか、性格なのか、何でも四角四面にきっぱりとした解答をすぐに求めたがる私。昭和っぽいのかなあ?そういえば親の世代は、こんなふうに柔らかく……いい加減ではなく、今よりもっとみんな一生懸命だった気がしますが、人の間違いとかもふんわり包んであげる優しさがあったような気がします。
- 感想投稿日 : 2022年2月15日
- 読了日 : 2022年2月15日
- 本棚登録日 : 2022年2月15日
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