国家保安官から地方の警官へと左遷されたレオ。
その田舎町でおきた殺人事件が、かつて自分が国家保安官時代に“事故“だと決めつけて調査しなかったモスクワでの少年殺人事件と類似していることに気づき、さらに広範囲で類似の子供殺しが起きていることを知り、命がけで調査に乗り出す。 類似の殺人事件もそれぞれの土地で、ろくに調べられないまま、今でいうLGBTなど国家から認められないものの仕業とされ、そういう人が自白を強要され、処刑されることで片付けられていた。
ソ連の体制の中で「殺人事件などあってはならない」とされていた中で、国家によって葬るように解決された事件を掘り起こして調べることは、バレたら間違いなく告発され処刑される。
しかし、元国家保安官だったレオは国家保安省の裏をついて、秘密裏に行動、妻と一緒に逃避行する様はハラハラドキドキ。アメリカ映画のよう。上巻では社会派ミステリーだと思っていたが、下巻になると「いくらなんでも」と思うくらい上手くいくアクションや命がけで奇跡のように味方になってくれるソ連の庶民たち、一番近くの裏切り者、死を目前にしたラブロマンス、主人公の秘密の生い立ちなどなどエンタメ性抜群。作者はドラマの脚本家として活躍されている方だそうだ。さすが。
犯人については、下巻の初めのほうでバラされていたのだが、上巻での伏線を覚えていなかった私は気づけなかった。でも、犯人を特定出来ても、そこからなんですよ。この小説のドラマ性は。
犯人を推測するミステリーとしての要素よりも「極限状態に置かれたときの人間の残酷性」や「極限状態の中で生まれる愛」、「束縛された社会で生まれる偏執性」など旧ソ連を舞台にした人間のドラマとして面白く読めた。
- 感想投稿日 : 2023年9月3日
- 読了日 : 2023年9月3日
- 本棚登録日 : 2023年9月3日
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