世界インフレの謎 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2022年10月20日発売)
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新型コロナウィルスのパンデミックに、ロシアによるウクライナ侵攻。
国際的な大事件が続けて起こった、2020年代初頭。
経済的にも大きな波が起こり、気づいたら日本でも、「〇〇の値段が上がった」という報道を頻繁に見聞きするようになりました。

新聞などでは、「ロシアによる、資源や穀物の輸出制限」や「欧米による、ロシア産品の輸入制限」がインフレの要因である、という説明がなされ、なんとなく「そうなんだろうな」と受け入れていました。
しかし、今回のインフレの発生メカニズムを理解できておらず、また、「いつまで続くのだろう?」という不安もあり、関連する本を読んで、知識を得たいと思っていました。
Audibleのラインアップをチェックしていたところ、まさにその疑問に答えてくれそうな本があることを知り、聴くことにしました。

著者は、日銀にも勤務していた経験があるという経済学者。

序盤で著者は、「今回のインフレの要因は、ロシアによる戦争が原因ではない」と主張します。
その上で、戦争の勃発以前に世界に広まった、新型コロナウィルスに言及します。

感染症が人間社会に及ぼす影響とは、どのようなものがあるのか。
その影響は、今回のインフレとどう、結びついているのか。

著者が見立てた仮説を、統計データを用いて検証していくような形で、本書は記述されていきます。

消費者の行動がどう、変化したのか。
労働者の行動がどう、変化したのか。
企業の経営環境に、どのような変化があったか。

上記それぞれについて、著者が挙げている要因は、インフレ誘引に大きな影響を与えるほどのものではないのでは?と感じました。
しかし、これらが世界で同時多発的にで起こったことが、世界規模のインフレを引き起こしているのだ、と理解しました。

物価というものはどのような要素によって決まるのか、変化してくのか。
その基本的な構造を、本書を読んで(恥ずかしながら)初めて、理解することができました。

物価が変動しない、給料も上がらない、という状況が数十年続いた日本は、世界の中では特殊な存在なのですね。
日銀がなぜ、2%という数字を出したのか、政府がなぜ、企業に賃上げを要求したのか。
経済に関する複数の動き、その相互の関係についての著者の説明は、非常にわかりやすいと感じました。

物価というものは、国民の意識(空気)に左右される部分が大きい。
今回のパンデミックの影響は、過去の事例とは大きく異なる部分がある。

物価を左右する“カラクリ”を理解していても、今後どのように動くかは予測できない、ということも分かりました。
経済状況の理解、関連知識の習得を継続して、物価の変化に備えていこうと思います。
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国際人
感想投稿日 : 2023年8月21日
読了日 : 2023年8月21日
本棚登録日 : 2023年8月21日

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