泰平の世、江戸時代の参勤交代を題材に勧善懲悪の時代劇で清々しい気持ちにさせてくれる物語。
あわせて観た「パラサイト 半地下の家族」とは真逆。何が真逆かというと、高低差を崩していく。
寛容で民にも家臣にも慕われるお大名の人柄により、生まれながらに身分が決まっている時代で、次々に身分の高低差を崩していくのだ。
冒頭、参勤交代が終わり自国に帰って、農民に声をかけられると、馬を降りて農民に駆け寄る。そして、土のついた大根の泥をぬぐい、かぶりつく。お互いフラットな目線で会話がされる。
物語は、江戸の悪徳老中の無理難題、5日間での参勤交代に挑む。参勤交代は、金もかかるし(しかも帰ってきたばかり)、大名行列を組んで練り歩けば、時間もかかる。ようは悪徳老中は、この藩を潰して領土の金を手に入れてやろうという完全に上から目線の傍若無人。
お大名が選択したのは、生まれ持っての身分への抵抗ではなく、お家のお取り壊しを防ぎ、民を救うために、知恵と人望と積み重ねた徳による奇跡をもって、この無理難題を乗り越える。
この奇跡の数々も縦横斜め、色々な身分の人達をお大名は、徳を持って接して、次々に自らのチームに引き込んで行くから痛快。横並びのスクラムで壁を壊していく。
そして、におい。
無茶な参勤交代のため、獣道を駆け、野宿し、川に流され、どろどろのボロ雑巾状態になる。体から発するのは、芳しいにおい(匂い、臭いではない)。
でも、この「匂い」を、みな鼻をつまみ、顔をしかめて、「クサイクサイ」というが、フラットで信頼感のある、つながりの深い関係だと、高校球児の汗のごとく、清々しい匂い、未来を掴むための努力の匂いとして、描かれている。
一方、最後に対峙する悪徳老中は、身なりは綺麗でも、腹の中から据えた「臭い」さえ感じる権力とお金の欲にまみれきっていた。(典型的な悪の権現!)
キレイにまとまりすぎて物足りないところもあったが、「パラサイト」との高低差、においの表現の違いで楽しめた。
- 感想投稿日 : 2021年2月14日
- 読了日 : 2021年2月13日
- 本棚登録日 : 2021年2月13日
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