ボーダーライン (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2002年6月25日発売)
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本棚登録 : 806
感想 : 45
4

真保氏、また一皮剥けて今まではちょっと違う作品を献上してくれました。
もともと社会派(ご本人はこう言われるのを嫌っていらっしゃるようですが)と言われ、マイナーながらもとてもプロフェショナルな職業を取り上げていたので、どちらかというとハードボイルド的な筆致ではあったんだけど。
本書で好感が持てたのは、主人公・永岡オサム(通称サム)が特にカッコイイ探偵とかではなく、普通の人で、どういうわけか探偵と同じようなことをするようになっていた、という人だから、すごく悩む。
普通の人なら当たり前だと思う。
どこまで調査上、プライベートに首をつっこんだらいいのか、などなど。
彼自身、トラウマとなっていることもあるのだが、この事件にかかわって大きく成長する。そしてカッコイイ人となるのだ。
「ボーダーライン」はもちろん「国境」を意味し、本書でもUSとメキシコのボーダー付近の町などがでてくる。
それにかけて心のボーダーライン(境界線)についても触れられている。
こっちの方が本筋だけど。
その心の境界を越えてしまった、それも息子を持った親の気持ち。
読んでいてとても痛い。
親にだって打算はある。
それに人間なのに。子供たちはパーフェクトな親を求める。う・・ん、つらい(苦笑)。
私がもう親の側だから思うのかもしれないけれどね。
自分の子供が・・・と考えると、子育てというのは本当に大変なことなのだと考えさせられる。
是非、サムを主人公にしてUSでのハードボイルド的活躍を書いて欲しいものだわぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 4つ☆以上のミステリー小説
感想投稿日 : 2015年1月27日
読了日 : 2015年1月27日
本棚登録日 : 2015年1月27日

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