ナショナリズムの復権 (ちくま新書 1017)

著者 :
  • 筑摩書房 (2013年6月5日発売)
3.26
  • (5)
  • (11)
  • (10)
  • (4)
  • (4)
本棚登録 : 228
感想 : 17

【メモ】
 nationalismについての誤解を解くという一つの目的自体は、はっきりしているし賛成できる。ただし、下記目次に見えるように「思想家を読み直すこと(だけ)で、本書タイトルが達成できる」とは限らないのでは。
 また、災害による犠牲者を弔うことにnationalismの復権が必要だとも思えない。
 こんな理由から個人的には説得されないが、この試みは意義があると思うし、何より熱意を感じた。


【目次】
目次 [003-006]
はじめに――ナショナリズムの論じ方 [007-012]

第一章 ナショナリズムへの誤解を解く 013
1 ナショナリズムをめぐる三つの誤解 014
三つの誤解/ナショナリズムは「全体主義」か/ナショナリズムは「宗教」か/死から逃げるためのナショナリズム/ナショナリズムは「デモクラシー」か
2 ナショナリズムは「危険」なのか 028
ナショナリズムと死/国家について考えることは、人間について考えること

第二章 私の存在は、「無」である――ハナ・アーレント『全体主義の起原』 033
1 人々を全体主義がとらえ始めた 034
困難な定義/ポール・ヴァレリーの衝撃/テレビを見るような
2 何が起きているのか、人間の心のなかに 042
拡散と膨張/異質なものとの出会い/存在が「無」になる
3 「負い目」の意識は誰にでもある、そこに全体主義が宿る 051
国内のモッブたち/読解のキーワード①「高文化」平均人とは、無個性の人である/読解のキーワード②「汎帝国主義」/「血」という概念
4 そして、全体主義に呑みこまれる…… 065
モッブから大衆へ/大衆、そして全体主義へ/ナショナリズムは全体主義ではない

第三章 独裁者の登場――吉本隆明『共同幻想論』 075
1 吉本隆明とは、何者か 076
全体主義の基本モデル/吉本隆明の登場/吉本思想の核心/『共同幻想論』
2 個人幻想は人間を、自殺へ追いこむかもしれない 092
個人幻想と共同幻想/自殺の論理/宮本顕治とマルクス主義/ロマン主義とは、何か/個人幻想のゆくえ
3 独裁者はどうやって登場してくるか 108
「空洞化」する個人/対幻想のゆくえ/独裁者の登場

第四章 「家」を見守るということ――柳田国男『先祖の話』 117
1 ハイデガーの「死」に、吉本隆明は疑問をもった 118
震災と死/第二の誤解/ハイデガーと死/吉本隆明の反論/他界はどこにあるのか
2 網野善彦と柳田国男は対立する 133
網野善彦とは、何者か/網野史観の特色/ポスト・モダンと狩猟民/『祖先の話』――家について/見守るナショナリズム

第五章 ナショナリズムは必要である――江藤淳『近代以前』 153
1 戦後から江戸時代へ 154
八月一五日=三月一一日/三つの誤解/江戸時代へ
2 江戸思想に入門してみる 162
二冊の書物/留学中の衝動/江藤淳はなぜ江戸儒学に注目したのか/藤原惺窩の危機/藤原惺窩の決意/一六〇〇年=一九四五年
3 溶け出す社会 177
崩壊から秩序へ/林羅山の登場/秩序の必要性/時代診断の結論

第六章 戦後民主主義とは何か――丸山眞男『日本政治思想史研究』 187
1 丸山眞男は朱子学に、まったく逆の評価を与えた 188
『日本政治思想史研究』の破壊力/丸山眞男にとっての朱子学/江藤淳 vs. 丸山眞男
2 安保闘争を通じて、民主主義評価は二つに割れた 196
江藤・喪失・戦後/安保闘争/丸山眞男の論理/丸山眞男の帰結/政治的季節の中の個人/ナショナリズムは必要である

終章 戦後思想と死の不在――ナショナリズムの「復権」 213
ある右翼の証言/ナショナリズムの「復権」/戦後思想と死の不在

終わりに――再び、政治の季節を前に(二〇一三年五月 被災者借りあげ住宅を出てから9ヵ月目に  先崎彰容) [225-228]
主要引用・参考文献一覧 [229-233]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 311.政治学
感想投稿日 : 2017年2月16日
読了日 : 2017年2月16日
本棚登録日 : 2017年2月16日

みんなの感想をみる

ツイートする