発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ (健康ライブラリー)

著者 :
  • 講談社 (2013年12月11日発売)
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本棚登録 : 715
感想 : 39
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勧められて読みました。発達障害のある子どもはおろか育児の経験すらありません。発達障害に関しての知識は、ないに等しいです。
結論から言いますと、読むように頼まれた本だったので最後まで読みましたが、子どもとの接し方において新しい発見みたいなものは特になかったです。

子どもとの向き合い方の内容はほとんど普通、というか当たり前の内容でした。声を掛けても全く反応が無い、また、まだ言葉が話せない子どものお世話をした事はありませんが、私自身小学校4年生くらいまでは、年長者が他にいないこともあり近所の子供たちの面倒を私一人で見ることも多く、その際は本書に書かれている内容で応対していました。弟妹を連れて来る子もいたので3歳くらいの子も何人かいましたが、定型発達の子どもならこの本に書かれてある内容でまず問題なく交流出来ると思います。

18〜19ページに書かれているプロンプトやコンプライアンス、スモールステップなど、ABAを利用した働きかけにおいては、真新しいどころか、そもそも子どもとの向き合い方はこれ以外想像できませんが……。子どもというのは放っておいても勝手に育つ、と聞いたことはありますが、まさか本当に自主性に任せる訳でもないでしょうし、気になりました。


新しい発見こそなかったものの、本書を読んで強く感じたのは、いかにワンオペ育児が辛く厳しいだろうかということです。
強固なオウム返しについての内容を読んだ際に思い出したのですが、子守りしていた近所の子どもたちの中に、この例のように強固なオウム返しをする子がいました。私自身『まだ上手く話せないんだなぁ、でもそのうち話せるようになるのだろう』と思い、深く考えずオウム返しと向き合っていました。おかしなやりとりをしていると興味を持ったほかの子たちも声を掛けに来ました。声を掛けに来る子はサポートしたいと思う時だけこちらへ駆け寄り、解決すると自分の遊びに戻っていました。うまく会話出来ないことに対応出来ずに困ってしまう子や、その子と関わり合いたくない子は離れて遊んでいてちょっかいをかけることはありませんでした。サポートしようと思う者だけが周りから「この時は『〇〇』だよ」「〇〇って言うんだよ?『〇〇』」「〇〇」とみんなで明るく声を掛け続けていると、いつの間にかオウム返し自体なくなっていました。

たまたまそのように感じただけかもしれませんが、本書の内容を鑑みると、負担の少ない状態での余裕のある応対が功を奏したのかも知れないなと思いました。そもそも、周囲の環境によっては、いじめや意地悪の対象にされてしまいやすい特徴のある子どもこそ、衆人環視の下で負担を減らしながら見守りサポートすることが必要なはずだと思うのですが、家族という窮屈な枠組みのみで賄わなければならない現代の日本の育児環境の劣悪さを改めて思い知りました。家族は休む間も無いのだろうと思うと、居た堪れません。実際の育児は想像以上に過酷で、18〜19ページの応対方法が頭でわかっていてもこんな風に応対出来ない、というのが実情でしょうか。





以下、本書を読んで気になった点です。

まず、ファーストフードで実際にオーダーさせてみるという項目のところに、(書かれておらずとも当然の事なんですが)「空いている時間帯を選んで」だとか「実践する際にスムーズに行えるよう練習は充分すぎるくらい行ってからにしましょう」くらい書いておいて欲しかったです。あと、大切な経験を積ませてもらうのですから、店員ではなく店員さんなどの表現の方が好ましいのではないかと。

あと、言葉かけのチャンスがたくさんあるという表現が「転がっている」になっていたり、さまざまな種類の質問を織り交ぜることで語彙力や会話の能力を高めるようにとの表現が「角度のちがった問いを次々と投げかけることで」とあって『次々に質問をしてしまうとパニックになってしまうのでは』と気になってしまいました。

特にモヤモヤしたのは、91ページの問題行動について書かれている項目で紹介されていた自閉症の当事者Aさんについてです。Aさんは普段から著者と交流のある方なのか、ただブログを見て知っただけなのか気になりました。突然名前を出す必要がわかりませんでした。

22ページの平均台での花子ちゃんの親御さんや、141ページの「オレはオレ流でいく」のエピソードも、わざわざ書かなくていいのになと思います。

そして友達に耳元で「『死ね』とささやかれ続けた」や、「うんちを少し洩らしていた」などの内容を、著者のお子さんたちは本に載せてもよかったのかな、と心配です。いじめに関しては、数週間も耳元で囁き続ける行為は陰湿かつ悪質で、友達ではないと思うのですが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 発達障害
感想投稿日 : 2020年9月25日
読了日 : 2020年9月25日
本棚登録日 : 2020年9月25日

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