エピクロス: 教説と手紙 (岩波文庫 青 606-1)

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感想 : 31
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 エピクロスの快楽主義は誤解されているような気がしている。我々がいい車、いい女、いい家を手に入れるためにあくせく働いても、苦しみを増幅させるだけで決して真の意味での「快」を手に入れることはできない。それはたとえ目的を果たしたとしても同じことで、エピクロスはこういった「動的な快」よりも、苦しみの全くない状態という意味での「静的な快」を重視していたことがわかる。苦しみを与える人物、物事は徹底的に遠ざけよ、そうすることで「静的な快」を手にいれることができる。
 エピクロスの生きた時代は繁栄期から衰退期への移行の過程にあり、まさに現代と似た状況であったことがわかる。その意味でエピクロスを読むことは価値があると思う。唯物論的原子論と合わせて読むとエピクロス流個人主義がよくわかる。

 以下の箴言が印象に残った。
 「大して考えもせず成功するよりも、考えすぎて失敗するほうが価値が高い。」
まるで現代人の投資についてアドバイスしているように思えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月22日
読了日 : 2023年7月22日
本棚登録日 : 2023年7月2日

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